第2話 新学年初日の通学路②
そんなこんなで、なんでか
「今日から新しい学年ね、
これが一人言じゃないとするなら誰かに向けてのキャッチボールとなる。ミットを持っているのは誰だ。ぼくか?
身長百六十五センチのぼくより一頭身大きい、
「どうしたの、
「いやあ。どうしてぼく、
素直に聞いてみる。
ただでさえ大きな瞳が、まん丸お月様みたいになっている。ダメだよ、
予想外の反応にこっちも「お、おっふ……」と人生で初めての戸惑いの声をあげていると、
「な、なにしてるの?」
「もしかして私……くさかった?」
「なんで……」
「だって私と一緒に歩くの……イヤなんでしょう?」
お月様なのに雨の気配を漂わせ、視界の潤んだ
いや、嫌とは言ってません。そんなこと言ってませんとも。ええ。そんなことを口にすれば学校に千人はいるとされる
内心では冷静に対応しようと思いつつ、小市民のぼくは口をなんどもパクパクさせて次の言葉をつむぐ。
「ち、ちがうんすよ! すよ? ただどうして一緒に登校しているのか分からなかったから、だから不思議に思っただけで、その、ね!」
「約束、したから!!」
「――え?」
「約束、したから!! だから――」
ぼくから見て、うつむいている体勢の彼女は、制服の
「…………」
そっか、約束したのかぼく……。
――してないな。
「やくそく、したから……!」
ええ……?
記憶にないな。おーい、記憶にありませんよ、
勘違いじゃないかなぁ、それ勘違いじゃないかなぁ……と聞きたかったが、
ぼくは走馬灯のように頭をフル回転させ、次の言葉を繋げた。
「し、した、ねっ!?」
「うん。そうでしょ!」
「うん、したした! いやあ、したした。いま記憶を捏造しました!」
「……え?」
「いや、思い出した。思い出しましたとも!」
「ひゃ、百回はしたね!」
「いえ。百回はしていないんじゃないかしら?」
うお、そこで冷静にツッコミいれますか。「そうだよね、五十回くらいだよねー」とテンションのままに実のない会話を一区切りさせる。
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