第8話 クラス④
経緯を話すと
缶の中身は――新二年生の名前がリスト化されただろう数枚の紙に、八本の割り箸だ。割り箸には『一組』~『八組』までが書かれている。リストの名前欄には手書きで組が追加されており、まるで箸を引いて割りふったみたいだ。
「あれぇ、ソンなわけないんだけどなぁ?」
先生が困った顔で紙と箸を見つめる。
「…………」
クラス分けって、くじで決めてんの!?
ぼくが
「平等じゃん?」
「もっと考えなよ! 生徒同士の相性とか、なんか色々あるでしょ!」
「あのなぁ? 学校っていうのは集団行動を学ぶことが目的なんだ。これからお前たちは社会に投獄されて好き嫌い関係なくメンドクセー奴らと殴りあっていく。だったら、ここでそれを体感しなくてどーするんだって話なんですか、ネ?」
「疑問形じゃん! テキトー、先生やっぱ肝心なところで適当すぎだよ!」
ぼくの忠言を無視して、
てへへ、てへへ、と自分の頭をコツコツ叩いているが、ぜんぜん愛らしくないぞ?
「ヤっちゃったね!」
「ちなみに、なんでぼくのだけ別保管されてたんですかね?」
「コレはね。ちょっと面倒そうな子だけやっぱ考えないと他の子に可哀そうかなーって、ある日ワタシのなかの天使がささやいたんだ」
「その天使さんはどうしたんですか?」
「飽きて天界に帰った」
いや、やっぱり怒っていいかな、これ?
ぼくが怒りを再燃させていると、さすがに不味いと思ったのか、
「と、特別措置を取ろうか。もしこのことを黙っていてくれたら、オマエを好きなクラスにねじ込んでやろう」
「っ!?」
「他にいないぜ? 自分で自分のクラスを決められる奴なんて。ヤッタネ!」
理由(ワケ)なく被害こうむったのだから、プラマイゼロな気がしないでもない。
まあでも、やっふぅ! こいつは素晴らしい。自分でクラスを選べるなら、苦手な人がいるクラスを避けられるということ。親しい友達とかいないし、そっちの基準はどうでもいいかな!
どこにしよっかなー。
どこにしよっかなー。
「ちなみにワタシは一組の担任でもあるゾ?」
「あ、じゃあ一組は避ける方向で」
ぼくが露骨に一組の割り箸を折ると、救世先生は悲鳴を上げた。そりゃそうだよ。誰がすき好んでこんな面倒な担任がいるクラスを。
「――あの!」
そこで、この場に似つかわないハーモニカみたいな声が響く。なんだぁと思って
な、なぜ!
『クラスを意図的に決める』という学校法を揺るがす犯罪を見つけられたぼくら二人は、お縄を幻視する。黒紫憧・ザ・婦警さんは真剣な顔つきで近寄ってきた。
「ごめんなさい、先生。私、そこですこし話を聞いていて。あの、ちょっとした手違いで
「そ、ソウだよ?」
「なら一組はいかがでしょう! 私も居ますし、なにかあった時、力になれます!」
「いや、嫌なんだって」
「え、なんで!?」
「サァ?」
センセーッ、
一組には苦手な人が居る。というか今できた。
そして同時にちょっとだけ親しい人もいる。というか今日なった。
これは単純な足し算引き算の問題だ。
避けたい人と、近しい人。いや、避けたいと人と、近しくなりたいと思える人。
その二つを天秤に乗せた時、どちらに傾くかと言われれば、それは――
ボクの答えは――。
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