第9話 夜の召喚者

 大きな湖の近くにある小さな村に住む人々は、夜になると村の境界線に灯された複数の蝋燭を見つけることがあった。村人たちはこれを「夜の召喚者」と呼び、その存在を恐れていた。


ある晩、村の若者であるアンリは夜の召喚者の正体を知るべく、密かに村の境界線に潜り込んだ。すると、そこには暗闇の中で灯った蝋燭の周りに立つ影がいくつもあった。アンリは驚きながらも、その影たちが亡者たちであることに気づいた。


亡者たちは夜の召喚者の蝋燭に引き寄せられ、村の方へと近づいてきた。彼らの目は空虚で、無数の霊的な願いと憧れが宿っているように見えた。アンリは恐怖に打ち震えながらも、亡者たちの中にかつての村人たちの姿を見つけた。


その時、亡者たちは一斉にアンリに向かって歩み寄り始め、彼の周りには幽霊たちが彼を取り囲むようになった。彼らは過去の悲しみや未練をアンリに訴えかけ、彼に何かを伝えようとしているようだった。


アンリはその場から逃れようとしたが、霊たちは彼を妨害し、彼の周りに現れる影が次第に濃くなっていく。最終的に、アンリもまた夜の召喚者の一部となってしまい、村の人々が彼の姿を見かけることはなくなった。


以後、村では夜になると亡者たちが夜の召喚者の蝋燭に引き寄せられ、彼らの影が村の境界線に立ち並ぶ様子が見られた。人々は亡者たちとの交わりを避け、夜の召喚者の存在を忌み嫌うようになったという。


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