第34話 魔女の影

 その村に住む人々は、近くの森に住むとされる魔女の存在を恐れていた。ある寒冷な冬の夜、村は深い霧に包まれ、魔女の影が村を覆っているような気配が漂った。


ある若者、アンリクは恐れを振り切り、その森に足を踏み入れた。闇に包まれた木々の間を進むうちに、彼は見知らぬ村を発見した。しかしその村は、まるで別次元のような異次元の場所で、人々は影絵のように薄く、透明な存在だった。


アンリクはその村で、美しいが儚げな女性、エリオーネと出会った。彼女はアンリクに、この村は魔女の呪いによって生まれ、影の中で永遠に続いていると告げた。エリオーネは自分もまた魔女の呪いによってこの村に閉じ込められ、出口を見つけられないでいた。


彼らは共にこの異界の村から脱出する方法を模索し始めた。村には奇妙な歌声が響き渡り、見えない手が影の中を探りながら彼らに迫ってきた。エリオーネは歌声が魔女の呪いを打ち破る手がかりであると教え、アンリクと共にその歌を覚え始めた。


彼らの歌が村に響くと、異界の村が揺れ動き、影たちが輪郭を取り戻していった。しかし、その中から魔女の姿が浮かび上がり、アンリクとエリオーネを呪いに巻き込もうとしていた。


決死の覚悟で歌い続けたアンリクとエリオーネは、魔女の影を消し去り、異界の村から解放された。彼らが元の世界に戻る瞬間、村の影は霧に包まれ、かつての様子を知る者はいなかった。


アンリクとエリオーネはその日以後、村の人々には語られなかった異界の村と魔女の影の冒険の記憶を胸に秘め、平和な日々を過ごした。しかし、その森の奥深くでは、未だかつてない冷えきった影が微かに舞っているようだった。


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