中世ヨーロッパの怖い話

第6話 騎士の呪縛

　そこには勇敢な騎士であるセルゲイが住む城があった。彼は恩人である領主に仕え、数々の戦いで勝利を収めていたが、ある時、彼は敵対する領主の娘、エレナに恋をした。

セルゲイの恋心は報われ、エレナもまた彼に心を寄せた。しかし、恋人同士であることが周囲に露見し、領主は彼らを引き裂こうと画策した。ある夜、領主が密かにセルゲイを拷問し、彼に不可解な呪いをかけた。

呪いの結果、セルゲイは不死でありながらも永遠に苦しむ存在となった。彼は城を出られず、エレナとの再会も許されず、城内で孤独に彷徨うことになった。彼の姿は夜間にのみ現れ、城の中に響く彼の嘆きと絶望の叫びが、村人たちを震え上がらせていた。

村人たちはセルゲイの魂が呪われていることを知りながらも、城に近づくことは避け、夜になると家々に引きこもるようになった。エレナは彼の呪縛を解く方法を見つけるため、危険を冒して城に忍び込むことを決意した。

彼女はセルゲイと再会し、彼の悲劇を知った。しかし、呪いは非常に強力であり、解く方法が分からなかった。エレナは愛と勇気を胸に、彼のために何かを成し遂げようと心に誓った。

以後、城からは夜になるとエレナの歌声と共に、セルゲイの哀愁漂う姿が現れるようになった。村人たちは彼らの存在を知りながらも、彼らの愛の物語に感動し、城に一度も足を踏み入れなくなったという。