第28話 禁断の書物

 ある小さな村に、禁断の書と呼ばれる古い書物が伝わっていた。村人たちはその書を恐れ、その存在を秘密にしていたが、ある夜、若者のルーカスがその禁断の書を手に入れたことで、恐ろしい出来事が始まった。


禁断の書には古代の呪文や禁じられた知識が書かれており、ルーカスは興味本位からその内容を解読しようとした。夜が更け、彼は村の外れにある小さな神殿に隠れ、禁断の書を開いた。


彼が呪文を詠唱すると、神殿の中に異様な光が差し込み、影が立ち上がり始めた。次第にその影は具体的な形を成し、透明な人々の姿が浮かび上がった。それはかつて村で暮らしていた者たちの霊魂であることが分かった。


霊たちはルーカスを見つめ、彼に対して囁くような声で語りかけてきた。彼らは古の呪文で封印されていた存在であり、ルーカスの呼びかけに応じて解放されたのだった。彼らは村への復讐を叫び、その影響は村人たちの夢にまで及んでいた。


ルーカスはその出来事を恐れ、禁断の書を封印しようとしたが、既に手遅れだった。禁断の書に触れた呪文は一度発動すると、容易には封じられないものだった。霊たちは村を徘徊し、村人たちの心に深い恐怖を植えつけていった。


絶望の中でルーカスは最後に、禁断の書を神殿の奥深くに封印することを決意した。しかし、それを行うためには彼もまたその力に巻き込まれ、霊たちと共に永遠の闇に閉じ込められることとなった。


以後、小さな村では神殿が呪われた場所となり、禁断の書の存在は伝説として語り継がれた。しかし、時折夜になると、その村から異様な光と影が漏れ出し、禁断の書の呪いが尚も続いているかのようだった。

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