第26話 亡霊の谷

  ある村の近くに、静寂な森が広がっていた。その森には村人たちが口を揃えて「亡霊の谷」と呼ぶ場所があった。ある冷たい冬の夜、若者のエリックは村人たちの忠告を無視して、友達とともに亡霊の谷に入っていった。


谷には薄暗い霧が立ち込め、木々は不気味にそよぎ、寂れた村の廃墟が広がっていた。エリックたちは古びた教会の前で足を止め、その扉を開けた。


中にはかすかな光が差し込むだけで、床には埃と蜘蛛の巣が広がっていた。エリックは足元の異変に気づくと、床に刻まれた奇妙な模様が目に入った。友達とともに模様をなぞっていくと、教会の奥に続く隠し通路が現れた。


彼らは興奮しながら通路を進むと、奇怪な光景が広がっていた。そこにはかつての村人たちが白い霊体となって彷徨っているのが見えた。彼らは静かに手招きし、呻き声を上げていた。


エリックは友達とともに、亡霊たちが何かを伝えようとしているのではないかと感じ、彼らの前に進んでいった。亡霊たちは手招きすると、彼らの周りにはかつての村が再現されていた。しかし、それは死者の目に映る幻想に過ぎなかった。


突然、亡霊たちは悲痛な叫び声を上げ、姿を消してしまった。エリックたちはその場に取り残され、周りには静寂が広がった。彼らが村に戻ると、森の中に浮かび上がる亡霊の谷は、もはや村人たちの存在を示すものではなくなっていた。


エリックはその日以来、亡霊の谷に入った者たちは、亡霊たちに導かれ、二度と現世に戻ることはないと言い伝えられた。


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