第31話 クレーンゲームをやろう
「ここのゲームセンター、結構大きいですね」
「いっぱい楽しめそうだね」
「ぬいぐるみがありますね」
「向こうにはお菓子のタワーもあるよ」
「何か欲しいものがあるといいですね」
「時雨は何かこれ見つけたら欲しいーみたいなものとかある?」
「特にはありませんね」
「まあやるだけでも十分楽しいし、色々やってみようね」
「私はあまり経験が無いので上手くはできませんけどね」
時雨は色々見回しているが、全く足を止めようとしない。ゲームで得られる景品に一切興味が湧かないのだろう。
このままの流れだと何もせずにここを離れることになってしまいそうだ。何か、何かいい感じのやつを……。
「……これ」
「どうかなさいましたか?」
「これ、やってみない?」
私が指差した方にあったのは熊のぬいぐるみが景品のクレーンゲームだった。
やらかした。これは私が時雨を子供の様に見ていることの証明になってしまう。
何か時雨が足を止めてくれる理由を作ろうと必死になって考えた結果がこれだ。
「西園寺さんはこんなのがいいんですか?」
「あーー、ええっーーと……、うん」
「ふふっ、あなたにも子供っぽいところあるんですね」
咄嗟のごまかしは時雨に悟られなかった様だ。
ちょっとバカにされたような気がするがまあそこは不問にしよう。
ん、さっき時雨はあなたもって言ってた?
じゃあ私が時雨を子供として見てるってまだ思ってるんじゃ……。
確かにそういう面もあるかもしれないけどそれ以上に私は時雨のこと大切な彼女だって思ってる。
「まあ、やってみよ」
「はい」
「あ、ちょっと両替してくるねー」
「はい、では私はここで待っていますね」
もっと小銭を持っていると思っていたが財布を覗いたら100円玉が8枚しか無かった。
カードでクレーンゲームができたらいいんだけどね……。
今時現金だけはちょっと時代遅れだと感じざるを得ない。
「両替してきた」
「おかえりなさいませ」
「それ言うのは家だけでいいよ」
お金の投入口の横に500円入れると6回プレイできると書かれている。
こういうのは大体500円玉を1枚入れないと6回プレイにならないと思っていたが、この機体は100円玉5枚でもいいらしい。
「よし、まずは私がお手本見せるね」
レバーを操作して、狙いのぬいぐるみの上までアームを持ってくる。
お手本といっても、時雨よりはあると思うがそこまで経験が多いというわけでもない。
ちょっと調子乗りすぎたかな?
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