第20話 心配性な2人
「いやー、いい睡眠だった。今までで一番かも」
「私は目覚めるまでは天国でした」
「何かあった?」
「……尿意……です」
「私より早く目覚めちゃったんだね。そういう時は全然起こしてくれていいからね」
「次からはそうさせていただきます」
「我慢できなかった時雨も見てみたかったけどね」
「お嬢様!?」
「ねえねえ」
「はい」
「もうその"お嬢様"って呼ぶのやめにしない?」
「えっ、ダメでしたか?」
「初めは時雨にそう呼んで貰えるの嬉しいなって思ってたんだけど、だんだんそう呼ばれることに心の距離を感じたんだよね」
「私の心はいつでもお嬢……西園寺さんの心の隣に居ますよ」
うーん、いいこと言ってくれるね。心が温められるよ。
「でも寂しかったから……これからは名前で呼んで欲しい」
「はい、承知いたしました」
「ちゃんと承知できて偉い、よしよし」
「……」
今のところ時雨は立場上仕方なくなでなでを受け入れているように見える。
この2日間、アプローチが過激すぎたかもしれない。恋愛経験が今まで無かったのでどの程度の加減でアプローチすればいいのか分からなかった。
今の時雨への私の好感度は-40%というところだろう。少なくともプラスになっているとは思えない。
表面上は明るく接してくれているが、心では私のことを拒絶しているかもしれない。
いざとなったら薬でも盛って……いや、そんなこと絶対にダメ。
私は私自身の力で時雨の心まで私のものにしてみせる。
私は西園寺家の社長令嬢。これは私に与えられた試練。乗り越えて見せる、絶対に。
いきなりこれからは名前で呼べと言われた。
西園寺さんの心に何か変化が起きているということなのだろうか。
仮に変化があったとして、それはどのように変化しているのだろうか。
もしそれが私に対する"飽き"だったらどうしよう。
もう今の関係に飽きてしまったから呼び方を変えて少しでも飽きを軽減する目的だったとしたら……私が切られるまでそう長くないのかもしれない。
こうして、2人はとんでもないすれ違いを抱えたまま、新しい今日を向かえるのでした。
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