第24話 温かみをプレゼント
「娯楽を叩き込むって言っても他にやること思いつかないね」
「そうですね」
「うーん」
西園寺さんが私の顔を見つめながら腕を組んで考えている。
私に何かするつもりなのだろうか。
「よしよし」
西園寺さんが直前まで組んでいた腕を私の頭へと伸ばしてきた。
「何ですかいきなり」
「時雨は私のために色々頑張ってくれてる良い子だから頭なでなでしてあげる」
「ありがとうございます」
「どういたしまして」
今日から時雨への過度なアプローチは控えるつもりだったが、やっぱり時雨が可愛すぎて抑えられない。
「時雨はもっと人に甘えることを覚えた方が良いと思う」
「何ですかいきなり」
「さっきと同じ反応だね」
「さっきからいきなりなことばっかりですからね」
「私は時雨をいっぱい甘やかしたい」
「私は別に甘やかされたいという気持ちはありませんけど」
「さっき私が人に甘えることを覚えた方が良いって言ったのはそういうところだよ」
「あなたが私を甘やかしたいだけですよね」
「それもあるけどっ。とにかく時雨はもっと人の温かみに触れるべき」
「そうですか。では思う存分触れさせていただきますよ」
「バッチこーい」
「ベッドに座ってください」
「ベッドでって、いきなりあんなことやそんなことす」
「断じて違います」
「……」
時雨に言われた通りにベッドに腰掛ける。
時雨はその隣、私の左側に座った。
「手を握ってもいいですか?」
「いいよ。好きなだけ握ってね」
「はい」
「温かいですね」
「これが私の温かみだよ」
少しでもこの行動が家族を失ってしまった時雨の支えになってくれるといいな。そんなことを考えながらこちらからも時雨の手を優しく握り返す。
「時雨は何かやりたいこととかあるの?」
「特にありません」
「小さいことでもいいんだよ。あれが食べたい。あそこに行ってみたい。何かあるでしょ?」
「……」
そこから少し沈黙の時間が続いた。続いたといってもたったの10秒ほどだが。
「思いつきました」
「聞かせてくれる?」
「西園寺さんとどこかに出かけてみたいです」
「場所は?」
「場所はどうでもいいんです。あなたと一緒ならどこでもいいんです」
「なら、この休みにでもどっか行こっか」
「はい、行きましょう」
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