第22話 よりメイドっぽく
「あ、お帰りなさいませ」
「岩永さんただいまー」
「ただいま帰りました」
「時雨ちゃんもおかえりー」
岩永さんはいつでも笑顔を絶やさない。これもメイドとしては基本の事なのだろう。これまで廊下ですれ違ってきたメイドさんも皆笑顔だったことを思い返した。
「今日は初めての週末を2人で楽しんで欲しいとのことで岩永さんの特訓は無いようです」
「なら今日はいっぱい楽しめるね」
「それでは、メイド服に着替えてきますね」
「うん、楽しみにしてるね」
今日はドアノブに何かが入ったビニール袋がかかっていた。
これもメイドさんに用意させたのかと思うと西園寺さんの人使いの荒さが伝わってくる。
今回は急ぎの用だったから、ということにしておこう。普段からこの調子だとはとても思えない。
ドアノブにかかったビニール袋を手に取り、部屋に入る。
荷物をベッドにぶん投げ、ビニール袋の中身を机の上に出してみる。
「白と黒……」
ビニール袋の中には白と黒のニーハイが1つずつ入っていた。
これは私のセンスがためされているのだろうか。
自分の意思では決めかねるのでこういうときはネットの力を借りるのが1番だ。
西園寺さんを待たせているのであまり時間はかけられない。はやくどちらにするか決断しなければならない。
メイド服に着替えながら急いで調べたが、画像をスクロールして確認した限り、白の画像が多かった。
これ以上時間をかけられないので白を履くことにした。
「西園寺さーん」
「入っていいよー」
「失礼します」
「おお、時雨は白を選んだんだね」
「西園寺さん的にはどっちがよかったですか?」
「別にどっちでもいい。色なんてそこまで重要じゃないし」
じゃあ2色も用意しないでくださいよ、とツッコミを入れたくなったが喉まで上がってきたそのツッコミはなんとか飲み込んだ。
「一気にメイド感上がって凄くよくなったね」
「メイド感とは?」
「……私もよく分かんない。言語化できないことってよくあるでしょ? ねっ?」
「……否定はしません」
「今日は週末でお互いやること無いから遊び放題だね」
「あと3週間で中間テストですよ」
「まだ3週間あるから大丈夫!」
「……」
実際、西園寺さんは頭が良く、小テストでは必ず満点を取っている。
まだ大きなテストは経験していないが、西園寺さんなら学年トップも十分可能だろう。
私も自分の学力にはそれなりの自信はあるが、西園寺のように他人から注目されるほどずば抜けているわけでもない。中の上くらいだ。
「早速だけど、今から何する?」
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