第3話 メイド長の岩永さん
「それじゃ、岩永さんに会いに行ってみる?」
「はい、行きます」
「OK、今から移動するから私についてきてね」
「お嬢様が隣に居てくれないと広すぎて迷子になりそうです」
「それもそのうち慣れると思うよ」
「人間の適応力は素晴らしいですね」
「大袈裟だよ」
「岩永さんはよく2階の窓際でスマホいじってるんだよ」
「岩永さんは仕事が早いんですね」
「うん、めちゃくちゃ早い。だからメイド長に選ばれたんだろうね」
「お嬢様の両親はどんな人なんですか?」
「とにかく甘い。角砂糖6個入れたコーヒーくらい甘い」
「分かりにくい例えですね。でも飲んだら胸焼けしそうなのは伝わってきます」
「私、とにかく甘やかされて育ったんだよね。だから私も人にすごく甘くなっちゃったんだよね」
「私からはお嬢様は甘いというよりも優しいという風に見えます」
「そういう風に見えるのはあなたも優しい人間だからだと思うよ」
「お褒めに預かり光栄です」
西園寺さんとしばらく廊下を歩き角を曲がると、1人のメイドが壁にもたれかかりスマホをいじっていた。
「あの人がメイド長の岩永さんですか?」
「そうそうあの人」
「岩永さーん」
「んっ、お嬢様……とその子はどなたですか?」
「今日からお嬢様の専属メイドになるクラスメイトの星宮時雨です」
「お嬢様がこの子を雇ったのですか?」
「うん」
「また突拍子も無いことを……ご両親には相談なされたのですか?」
「してないけど優しいから許してくれるでしょ」
「まあ……反対されることは無いでしょうね」
「それで、この子にメイドのノウハウを教えてあげて欲しいんだけど……」
「なるほど、それでここへ来たんですね」
「できる?」
「もちろん。任せてください」
「ありがとう。時雨も頑張ってね」
「はい。よろしくお願いします、岩永さん」
「私についてこられるかな」
突然岩永さんが先輩風を吹かせる。新しい後輩が出来たのはこの人もなんだかんだ嬉しいのだろうか。
私も優しく教えてくれそうで嬉しい。西園寺さんが担当をこの人に任せてくれて本当に良かった。
「まあ、今日は色々あって疲れただろうし、明日からにする?」
「はい、そうしていただけるとありがたいです」
「OK、時雨ちゃんの分の夕食も用意しとくね」
「ありがとうございます」
岩永さんはいきなり私の事を時雨ちゃんと呼んだ。フレンドリーな性格でもあるようだ。
「次は私の家族にも会いに行こっか」
「ちょっと緊張します」
「大丈夫、私の両親は本当に優しいから」
そういえばこういうのって、メイド長より先に両親に話すべきなのでは?
西園寺さんが自分の両親なら絶対許してくれるっていう確信があるんだろうけど。
自分の両親、か。
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