第12話 岩永さんの特製弁当
その後も授業終了までチームを変えて対戦した。
結果は2勝2負、可もなく不可もなくという感じだ。
更衣室で着替えながら2人と感想を述べ合う。
「結月が居るか居ないかでチームの戦力めちゃくちゃ左右されそうだったね」
「私も同感です」
「そう? まあ素直に受け取っとくね」
「バスケの経験とか無いんですか?」
「特にスポーツとかはやってないよ」
「ほんとに結月は完璧だね。顔とスタイル良いし、頭も良いし、おまけにスポーツまでできちゃうなんて」
「もうこの話、何回目だろうね」
「うーん、最低でも10回はしてるかな?」
「多分もっと多い」
「仕方ないですよね、私も伊藤さんと同じ意見です」
「そんなに誉めちぎられると流石に照れるでしょ」
「そうやって照れるところも加点対象だよ」
「もお~っ」
4時間目が終わり、昼食兼昼休みの時間になった。
今日の弁当は岩永さん特製のものらしい。
岩永さんは時雨が来てからちょっと張り切っている。
先輩としていいところ見せたいとかそんなところだろうか。
教室で私と時雨、紗理奈の3人で集まり食べる。
「さて、中身は何かな」
「楽しみですね」
「2人ともまだ中見てないんだ」
「毎日のお楽しみだよ」
時雨に合わせて弁当箱の蓋を開けた。
ほどよい色の配分、栄養、私の好み。全てが実現された完璧な弁当だった。
「栄養バランスとかもしっかり考えられていそうですね」
「それってメイドさんが作ってくれたの?」
「うん」
「凄く料理上手いんだね」
「ほんとにそうですよね」
「いただきます」
「いただきます」
「いただきまーす」
「んん~っ、美味しい~」
「素晴らしい味ですね」
岩永さんの料理は昨日のハンバーグと同じで、高級レストランと競いあえるほどの味だった。
弁当でもこれほどの味が出せるのかと驚いた。
この人がもし料理人になってレストランを開いたら星2つは堅いだろう。
「そんなに美味しいの?」
「紗理奈にも1口あげる。私達の反応が大袈裟なものじゃないって分かるから。サラダでいいかな?」
「じゃあ、お言葉に甘えて1口いただきます」
「はい、あーん」
「ええっ!?」
伊藤さんの弁当箱に入れるわけではなく、直接自分が食べさせようとしている。
距離感がおかしいのは私に対してだけじゃなかったんですね。
……何だろう、この気持ち。
私は、寂しいと感じている……?
驚きつつも西園寺さんが差し出したサラダを伊藤さんが口に入れた。
何度か噛み、サラダが口の中から完全に無くなった後、伊藤さんが感想を述べ始める。
「常温のサラダとは思えないほど美味しい。どうやったらこんなに美味しい料理が作れるようになるの? って感じ」
「だよね~」
その後も昼休みの間は岩永さんが作った弁当の話の熱が冷めることは無かった。
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