第25話 かっこいい?

「海かあ。最近行ってないなあ」

「私も小学生の時家族と行った以来だわ」

 部長が集中モードに入ったので上中と雑談をする。企画自体は他の二年生と話しあって調整する必要があるが……。まあいつも通り俺が責任者になるのだろう。


「スイカ割りと温泉がしたいんだったか。じゃあ後は、ビーチバレーか」

「男女差出ない遊びがいいわ。ビーチバレーはどうなのかしら」

「ああ、そういうことか。ビーチバレーならまあ男女混合でやればそこまで差が出ないだろう。どうせ遊びだし、そんな空気読めないやつもいないはずだが」

「いいわね、楽しみ。ずっとバスケしていたからそういう夏休みっぽい思い出がなくて」

「俺も中学の時は部活で忙しかったからわかるなあ。じゃあやる気に溢れてそうだし、道具係に任命しようかな。アマゾンあたりでスイカ割りの棒とかビーチバレーの玉とか買っておいてもらえると助かる。まあ、他の奴らも入れてLINEで話そう」

「わかったわ。任せて」

心なし上中の目がキラキラしている気がする。急に色々ノートに書き始めた。何かと思ってみると、旅のしおりを書いているようだ。やる気出しすぎだな。


キーンコーンカーンコーン。下校時刻のチャイムがなる。

「向井さんから連絡きたわ。今からなら富永さん話せるって。真逆と言っていた子ね」

「了解、行きますか」


「君たちは何をしているんだい? 最近忙しそうだが」

興味津々の顔でこちらに尋ねてくる部長。

「いやー、そうなんですよ。最近忙しくて。色々な人のお悩み相談にのっているんですよね」

「偉いな。上中くんの発案か?」

「そんな感じですね。まあ大変ですけどやりがいありますよ」

「いいね。そうやって色々な経験をすることで写真にも深みが出てくる…… かもしれないな」

かも、なんだと呟く上中。俺も内心同意した。


先生に追い出されるまでまだ時間がある。その前に冨永という子に色々話を聞こう。約束の教室前に行くと、向井と、本を読む真面目そうな眼鏡の子が待っていた。

「あ、来た来た。じゃあ帰るから後はよろしくー」

「はあ、でなんの用事でしょうか?」

 さっさと帰る向井に呆れた目を向けながらため息を付く、この子が冨永だろう。

「ごめんなさいね。明智さんについて話を聞きたくて色々な人に尋ねているの。彼女どんな子かなって。で、向井さんから冨永さんに聞くと良いって紹介されて」

「明智さんについてですか?そんなに仲良くないですが……」

「なんか、真逆の子だって聞いたよ?」

「ああ、かもしれません。私は色々な人と仲良くしながら過ごすタイプですから。色々な人と合わせることが得意なんです。明智さんとは真逆ですね」

「真逆だからそんなに仲良くないのかな?」

「まあそれもありますね。仲良くみんなでうまく過ごす、ということができない子はなかなか輪の中に入れると大変なことになるので……あまり一緒に過ごすことはないですね。ヒヤヒヤするんです、あの子といると」

「みんなが右って言ってる時に左が良いって言い出すとややこしいから?」

「そうです。あ、でも嫌いとかではないですよ? 彼女は個が強いので浮いてはいますがそれだけです。迷惑を周りにかける子でもないのでほっておけば問題ないですからね。向こうもこちら側はどうでもいいと思ってそうですし、お互い無干渉ですよ」

「いじめられたりもない?」

「まさか!退学のリスクまでおかしてですか? そんな頭が悪い人はこの学校にいないと思いません?」

「そりゃそうだ。君達も知ってるんだね」

「ええ、入学してすぐ先生に聞きました。1個上の先輩がいじめで三人退学になったって。退学なんて勘弁ですよ、あ上田さんだ」

 通りかかった生徒に声を掛ける冨永。

「どうしたの?」

「明智さんについて話聞きたいって先輩が。別に嫌いな人とかいないよね?」

「ないない。一周回ってかっこいい、と思ってる人も結構いるんだから」

「かっこいい?」

「なんか、クラス全体が生活指導の怖い先生とに説教された事があるんですよね。気が緩んでるって。その時明智さんが立ち向かってくれて。他人を見て態度を変えないのはかっこいい、という話です」


「なるほどね……ちなみに明智さんは男子人気はどうなの?」

「うーん、可愛いと男子が言っているのは聞きますが、仲良くなった男子はいないはずです。そもそも女子ともLINE交換しないのに男子なんて無理ですよね。近づけない存在って感じではないでしょうか」


おーい、お前ら帰る時間だぞー

遠くから先生の声が聞こえる。俺は二人に感謝を行ってその場を離れた。

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