第2話 ストーカー?
真面目な顔をした森下の説明が始まる。
「最近、誰かに後を付けられているみたいなんだ」
「怖い話が出てきたな」
「怖いよー、澪ちゃんは登下校一緒なのに何も感じないらしいんだけどね」
「そうね…… 特に何も感じはしないかな。そもそもいつも視線は感じるし」
森下も上中も、他の友人達も華があるので注目を集めやすい人達であるのは間違いない。
男子だけではなく、女子からも人気のタイプなので、いつも誰かに見られているだろう。
「でもあの紙は、本物でしょ…… えっと、靴箱に紙が入ってたんだけどね。「後ろに気をつけたほうがいいですよ」って」
「怖」
後ろに気をつけろ、とはまるで反社の脅し文句(実際に聞いたことはないが)のようだ。
どれだけ怖い人に粘着されているのか。
「ん? でも靴箱に入ってたということは学校の人が入れたんだよな?」
「そう、多分そうなんだよね。断言はできないけど流石にちゃんと警備員いる中侵入はできないと思うから……」
ここは都内のそれなりにいい場所にあり、私立高校ということもあり、セキュリティにはしっかり力を入れている高校だ。気軽に不審者が侵入できる環境ではない。保護者ですら、きちんと身分が確認できないと入れさせてもらえないと聞いたことがある。
「そうだな。それでストーカーということか」
「ええ、そういうこと。みなみちゃんが最近見られている気がするという話も合わせて、ストーカーがいるんじゃないかという話になったの」
「で、野口くん写真部でしょ? こっそり私の後をついていざという時の現場を写真で抑えて欲しいの」
変な依頼だ。そもそも犯行を防ぐわけでもなく、その場を撮影する? 普通に考えるとボディーガードのほうがいいのでは?
「柔道部とかのやつに警備してもらったほうがいいんじゃないか?」
「男子と登下校はちょっと色々面倒だからね…… 後、合気道で自分の身は守れるから大丈夫なんだ。ただ、何かあった時の証拠が必要だなって」
「ほら、この子モテるから。毎日男子と一緒にいたら変な話題を振りまく事になって面倒なの。後は合気道力に期待ね」
なるほど、と頷く。森下はあまり特定の男子と仲良くしているイメージはないが、それは面倒なことが起きるからなんだろうな。主に恋愛面で。俺だって変に親しくされたら勘違いして告白することになる自信がある。そして合気道部に所属しているから武力はあるということか。わかったようなわからないような話は続く。
「なんか、野口くんっ、前話しているの聞いたんだけどポケットに入るような小さいカメラ持ってるんでしょ? それ持って後ろを見守って欲しいんだ」
ああ、小型カメラか。確かに教室でその話をしたことがある。ふとしたときに自然な写真を撮るためにお年玉で買った、胸ポケットにいれるようのカメラがある。それを買って友達に自慢したんだが、皆から盗撮犯扱いされた。それでヤバさに気づき部室に封印しているが…… 確かに隠し取りにはちょうどいいかもな。
しかしカメラを持って後ろを付け回すなんて俺が不審者扱いされかねない。
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