第13話 可能性

とりあえず今日も森下の下校まで写真部で時間を潰す。ものの数日で上中も部長以外の部員と馴染むようになり、お喋りをするようになった。

「おー、今日も参加か。最近頑張ってるな」

 部長がやってくる。そうなんですよ、と返事をしようとした時にふと違和感におそわれる。何か部長の見た目が変じゃないか?


「部長、何かイメチェンしました?」

「ああ、イメチェンという程ではないが、髪の毛を明るくして、スカートを短くしてみたんだよ。これでちょっと明るそうな人に見えるだろう?」

 確かに部長といえば黒髪に膝下のスカートで、ザ生徒会という見た目だったが(所属していないが)髪が茶髪になり、スカートは森下や上中程度の短さになっている。


「なにかあったんですか?」

「いや、このままだと卒業写真があまりにも野暮ったくなると思ってね。雰囲気を変えてみようと思ったんだよ」

「なるほど、似合いますね!」

「ありがとう、ありがとう。自分でも意外とイケてるなと思ってるところだ。しかしスカートはまだ慣れなくてな…… 風があたると違和感があるんだよ」

「ああ、だいぶ短くなってますもんね…… でもなんか女子高生っぽい」


 そしてぱっと見で上中に似ているな。全体的な雰囲気が。身長は部長の方がちょっと高いが、普通の人なら見間違えるかもしれない。


「部長、それだと上中さんと似ているのでどこか変えてもらえませんか?」

 上中と話していた部員の安芸が笑いながら言う。隣の上中も苦笑している。

「確かに似てますね。お姉ちゃんみたい」

「ああ、安心してくれ。特に問題がなさそうなので今週末に髪を切ってくるですボブにするよ。さすがにそれで皆わかるだとう」

 

「髪切っちゃうんですか? せっかく綺麗なのに」

「気分転換だな。失恋したわけじゃないぞ?」

「部長と恋愛は最も遠い関係ですもんね」

 安芸はコロコロと笑う。それを否定しないところも部長らしい。その後は何事もなく時間が過ぎていった。


「今日は風が強いな」

「ええ、雨降ってたら傘が大変だったわ」

 森下を追いかける帰り道。先ほどからはためく森下のスカートが気になってしようがない。

「まあこれはこれでなかなか……」

「恥ずかしいからそういう事言わないでくれる? 気持ちはわかるけど」

「あ、ああすまん……」

 ふと視線をそらすと別の女子生徒が目に入る。これは厳しい戦いだ。

「今日の動画は何も無ければ私の眼の前で消してもらうからね?」

「はい」

 しばらく色々な方向を見てごまかしながら歩く。ゴール周辺、駅の前でふとある物が目に入る。ん? あることを思いつく。これは…… 可能性あるんじゃないか? あれがこうなっているなら…… 森下にも起きていた可能性がある。


「なあ」

「どうしたの?」

「わかったかも。森下の話。で、お願いがあるんだが…… 明日リュックサックで来てくれないか? 確かめたいことがある」

「リュックサック? いいけど。何か見えた?」

「ああ、可能性だが。明日話すよ」

「わかった。楽しみにしてるわ」

 その時の俺は目がキラキラしてただろう。謎を解いた可能性があるということがこれほど面白いとは。

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