第18話 お礼
「ねえ、野口くん。今日空いている?」
森下の事件?を解決して数日後。いつもと変わらない休み時間、高と酒井と雑談していると森下に話しかけられる。
「部活は…… 休みだな。大丈夫。どうした?」
「この前のお礼にスタバをご馳走しようと思って、駅前のところでいいかな?」
「サンキュー。それで頼むわ」
「ありがとう、じゃあ後で」
「おいおい、森下といつの間に仲良くなったんだ? お礼だなんて」
「話せば長くなるからまた今度話すよ」
「余計なお世話かもしれないけど2人で駅前のスタバは辞めた方がいいんじゃない? 皆に見られて変な噂広がるよ?」
「変な噂?」
「付き合っているとか、そう言うの。あそこのスタバはカップル御用達だからさ。どっかのカップルに目撃されるかもよ?」
駅前のスタバは、通学路ではないが通学路から近いため、利用する生徒も多い。俺も何回か行ったことがあるが、確かにカップルが多いイメージはあるな。そういうイメージが着くのは色々面倒ではあるのは間違いない。
「まあ野口なら大丈夫じゃないか? そんな恋愛している感じは出ないというか」
「確かに。森下さんのタイプではなさそうではあるけど」
「それはそれでどうかと思うが……」
「まあ、私達は困らないからいいけど、気をつけてね。わかっていると思うけど噂って面倒だから」
「そうだな、誰か他にいるか確認しておいた方がいいな」
「でもその確認ってなんか失礼じゃね? 2人では行きません、的な。女の子に2人であそぼーって声かけて、皆で遊ぼうって返された時を思い出すわ……」
なにかを思い出したのか遠い目をしている高。
「まあ高の話はともかく、上手く確認した方がいいかもね。それとなく。2人では行きたくないっていうの!?みたいな話になると面倒ではあるわね。そんな人ではないと思うけど」
そんな話をしていると森下からLINEが届く。
「あ、言い忘れていたけど1人合わせたい子がいるから! 話聞いてあげてほしいんだ〜」
「もう1人いるってさ。良かった」
「そうなんだ。それは良かった、と言うことでいいのかな……」
「まあちょっと悲しい事態だな……、まあなんだ、元気出せ」
なぜか励まされる。忙しい奴らだな。そんなこんなでチャイムが鳴ったので席に戻る。
そういえば上中は参加しないのだろうか? あの日以来部室では見かけるが特に会話していない。確認してみるか、と思いLINEを送ることにする。
「ああ、その件ね。私も行くわ」
すぐに返事が返ってきた。じゃあ4人と言うことだろうか? 流石に上中のことを「会わせたい人」とは言わないだろうし。どういう理由で会わせたいのかも気になるところではある。ファンです、みたいな話なのだろうか。
放課後、少し森下は用事があると言うことからスタバ集合になった。スタバに到着すると、上中の姿がある。4人席を確保しているので、やはり4人のようだ。フラペチーノを受け取り席に着く。
「早いな」
「ええ、国語の授業が早めに終わったから。4人席って人気だからすぐ埋まっちゃうでしょ? 早めに来られて良かったわ」
「まあ、人気だもんな。美味しいから仕方ないが。あと、駅前にカフェが少なすぎるんだよな。もう二、三店舗あればいいんだが」
「そうね。飲食店全般的に少ないものね」
その後はしばらく写真部についての雑談となる。なかなかもう人間関係が構築できているようで何よりだ。部長とも仲良く出来ているようだし、後輩とも一緒に活動する約束をしているらしい。
「人数は多くないけど皆個性的で楽しいわね」
「そうだな。部長の魅力で色々濃い人が集まった感はある。まあ皆活動は真面目だし、良いことだよ」
「ええ、今度土日に山に行って撮影する予定なの。加藤くんと後藤さんと。貴方も行く?」
「いいな、この時期だと緑が綺麗だろうしな、アリかもしれない」
「じゃあ参加ね。グループラインに入れておくわ。可能なら夜景も撮影したいという話になっているの。終電がある時間で夜まで過ごせそうな山を今後藤さんが探してくれているわ」
「おお、サンキュー」
まああの2人ならこんな適当な形で参加しても文句は言わないだろう。写真部の活動は自然発生したイベントにどんどん人が増えていくことが一般的である。つまりいつもの光景というわけだ。
そんな話をしていると、受付に並ぶ森下の姿が目に入る。隣にいる子は見たことがない。少し背が低いのと若く見えるので後輩だろうか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます