第20話 消えた教科書の謎

「不思議なことがこの前あって、心配しているんです?」

「不思議なこと?」

「そうなんです。朝学校に行って、トイレに行ったら何故か手洗い場に教科書が置いてあって。ふと中を見たら、私のだったんですよ。トイレに置いた記憶なんてない、なんならその前の日にそのトイレを使った記憶もなくて。他の人にも貸した記憶はないんですよね」

「寝ぼけていた?」

「歴史と地理と世界史の教科書だったんですけど、その日授業なかったんですよね。で、友達と言える友達は後藤さんくらいしかいないので、聞いてみたけど借りてないってことで」


「トイレっていうのが気味悪いわね」

「そうなんですよ〜。まあ水に濡らされていたりはしてないんですけど。それも変に気持ち悪いなって。いじめならもっと派手にされている気もしますし、中途半端なんですよね」

「いじめられているのか?」

「いえ、ないですが角が立ちやすい性格なので。嫌われているかもな〜と思う人は何人もいます」

「なるほど…… この辺り詳しそうな上中の意見でも聞いてみようかな。角が立つタイプらしいから」

「詳しくはないけど…… まあ何かのトラブルなのは間違いなさそうね。恨みか、遊びか。調べてみましょうか」

「ありがとうございます! みなみちゃんの問題を解決したということで、お二人なら助けてくれるんじゃないかとみなみちゃんから言われまして。嬉しいです」


「そうだな。それくらいなら俺もやるよ。しかしどうやってやる?」

「まずは後藤さんに話を聞いてみない? そこから考えてみましょう。明日部室に呼び出せば来てくれると思うから」

「なるほど、そうだな。誘っといてくれるか?」

「了解」

「ほえ〜 早いですね」

「そうなの。2人ともフットワーク軽くて頼りになるよ。私の時は休日も手伝ってくれたんだからね」

何故か誇らしげな顔をしている森下。


「それはすごい。私もお願いしちゃおっかなー」

何故か乗り気の明智。急に距離近めだな。

「あ、すいません。調子乗りました」

何故か引いた。と思ったら上中が無表情だった。普通に怖い。そしてその怖さを読み取れるくらいのコミュニケーション力は明智にあるようで安心した。


「雫ちゃん、この2人は距離感大事にしているから気をつけてね。ちょっとずつ仲良くならないと」

「はーい。でもまあいい人そうで安心しました。野口さんもチャらい感じでもなさそうですし」

「チャラい感じ?」

「みなみちゃんと上中さんを誑かしているようなチャラい人だったらどうしよう、って思っていました。男の子あんまり得意じゃないんですよね。下心がすぐ透けるのが萎えるというか。先輩からはそういう雰囲気を感じないので安心しています」

「確かに野口くんは女の子好きという感じではないわね。むしろ興味あるのか、というレベルで達観している可能性があるかも、というくらい」

「そんなことはないが…… まあ色々あってな。達観に近い状態だよ。だから安心していいぞ」

確かによく見ると明智は結構可愛い。元気で明るくて、可愛いとなればモテることは必至だろう。そっちのトラブルも森下と同じで多いのかもな。


「人間的な相性面でもいいかなと思って紹介したからね。とりあえず色々話しながら進めていってください。また何か進捗あったら私にも教えてね!」

森下は関わらないようだ。まあバスケ部も忙しいだろうし仕方ない。

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