第21話 調査

翌日の放課後、部室に行くと後藤が既にいた。いつもは後から合流するタイプだが、今日は早い。

「お疲れ様ですー」

「早いな」

「上中さんに来て欲しいって言われたんで、早めに来ちゃいました」

先輩に呼び出されたらそうなるか。

「ごめんね、急に」

「いえ、いつもクラスでだべっているだけなんで大丈夫です!でどうしたんですか?」


「この前野口くんと話している時に縁あって明智さんと仲良くなったんだけどね、明智さんと友達なんでしょ?で色々話聞きたいなと思って」

「ああ、雫ちゃんですか。仲良くなるなんて珍しい話を聞きました。あの子なかなか人付き合いが苦手なんですよ」

「一人が好きなタイプなのか?」

「いや、そういう感じではないんですけど…… なんていうか他人と合わせられないというか。良くも悪くも空気が読めないタイプなんですよね。仲良くなったらそのうち分かるかもしれないです」

「本人も言っていたんだけどあんまりピンときてなくてね。何かエピソードある?」

「そうですね、例えば…… 入学してすぐの頃話していた子がいたんですけど、私と三人で話していた時にその子が「ねえトイレいかない?」って言ったんですよね。そしたら雫ちゃん、「トイレくらい一人で行きなよ」って言って。笑顔で言ってるんで悪気はないんでしょうけど空気が凍ったのを思い出します」


「ああ、そういうタイプか…… 大体理解したよ」

「悪い子ではないんですけどね。その場で流されたりせず、自分の道を行きたがるタイプという方が合っているかもしれないですね」


「そうなるとクラスで嫌われたりしていない?」

「うーん、わからないですけどそういうタイプではないと思います。なんというか群れないというタイプなんで、害を与えるタイプではないですし。みんな雫ちゃんはそういうものだと思っているかと」

「モテるタイプ?」

「そうですね、よくも私のところに男子から連絡先交換の依頼が来ますが、全部断っているんですよね。一度話した事があるのですが好きなタイプは大人で個がはっきりしている人って言っていて、同級生を紹介できるイメージがわかなくて。直接男の子と話しているところはあまり見ないので色々遊んでいるということはないと思います」

 芯が強いという感じだな。しかし今のところ揉めそうな要素を感じない。自分らしく生きているという事が気に食わない同級生がいる? 一方的な思いで嫌がらせをした?


「それが気になったんですか?」

「え、ええ」

「そうなんだよ。普通にいい子そうなのに、友達が少ないと言っていてな。なんかあるのかと心配したんだ」

 上中が変な顔をしたのでフォローを入れる。確かに後藤からすればなんの話だろう、となるかなと途中から考えていたので咄嗟に理由付けが出来た。

「なるほど、そうなんですよね。最初の人あたりは良いんですけど、ちょっと経つと色々わかってくるタイプで…… でもお二人は仲良くしてもらえると私も嬉しいです。悪い子ではないんで」


「そういえば話変わるが、今度山に撮影行くんだって? 俺も行きたいんだが」

「あ、是非是非! 皆で行ったほうが面白いと思うんで」

 そこからは山での撮影について話が盛り上がる。とりあえず明智に関する収穫としては、我が強いので嫌いな人はいるかもしれない、一方でそこまで反応するような人がいるのかはよくわからないという感じがわかったということか。これはしばらく苦労するかもしれないな。

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