第23話 個性が強い生徒は先生にとってどう思う?
「今日の放課後、こっちの教室来てくれるか?」
「わかった、ちょっと用事出来ちゃったから30分くらいかかるかも」
授業中に上中とLINEを交わす。30分か。微妙な時間だな。何して時間を潰すか。
6時間目が終わり、部活に向かうクラスメイト達。高も酒井も行ってしまった。大人しく勉強でもするか…… お、森田先生がいる。暇つぶしがてらに捕まえてみるか。明智について相談してみるのもありかもしれない。俺は席を立った。
「先生、先生。ちょっと良いですか?」
「ん? 野口か。どうした?」
「先生って…… 個性が強すぎる生徒ってどう思います?」
「難しい質問だな。どういう個性の強さにもよるが……」
「自分の意見が強いタイプです」
「なるほどな。正直に言うと、トラブルがあった時にはややこしくなりやすいので慎重な対応が必要なタイプだな。自分の意見を曲げないと、トラブルが深刻化しやすくなるからな」
「ああ、それはあるかもしれないですね。俺の言うことが正しい、的な」
「そうだ。正しいのかもしれないが折り合いが必要な場面は社会では多い。折り合いが付けられないとなると周りも苦労するだろうし、先生も苦労することになる。まあ本人の方が後でもっと苦労すると思うが」
「後で、ですか?」
「社会に出てからチームワークを始めるとそういうタイプは苦労することになる。協調性が皆無だからな。学校だとそれでもなんとか周りが見守ってくれるが、会社だとそうはいかない。上司からの評価が下がって給料が下がったり、昇進できないなどとなることになる。基本的には社会はチームワークだからな。自分だけで生きていくことは出来ない」
「なるほど……」
「ただまあ、自分が強いのは良いことでもある。自己主張が弱すぎるのも問題だからな。なんとなく流されていくといつか取り返しのつかない地点まで流れていくこともある。ほどほどが大事だよ」
「ありがとうございます」
「野口はそんなタイプではないだろう?」
「あ、自分の話じゃなくて。自分の意見が強すぎることに悩んでいる友達がいて」
「ああ、なるほどな。ただまあその友達は大丈夫だろう。自分で認識できているのであれば問題ない。改善に向けたアクションが取れるだろうからな。一番困るのはその問題に気づいていない生徒だ。その場合他人の意見も聞き入れないことが多いので皆に放置され健やかに成長してしまうことがある。そうならないようにお前もサポートしてやるといい」
わかりました、と俺は頭を下げ席に戻る。トラブルがあると厄介、か。ただ明智のトラブルがある様子はない。周りと上手くやっている、もしくは放置されている気配はあるが、マイナスの雰囲気はまだ見えていない。今日確認するか。
「ごめんなさい、行きましょうか」
上中がちょうど30分で教室に来たので、明智のクラスへ一緒に向かう。
「なんかあったのか?」
「ええ、数学を教えてとクラスの子にお願いされて。教えていたの」
「ああ、それは大変だな」
「まあ、他人に教えるのは自分の勉強にもなるから良いのだけど」
「ん……?」
明智の教室には、もう皆部活に行ったのか誰もいない。正確には1人だけ掃除をしている生徒がいる。掃除とは無縁そうな爪をした金髪の女の子だ。1人放課後に掃除をやらされているのか?
「ねえ、なんで掃除をしているの?」
「ああ、趣味。というか誰?」
「2年の上中って言うんだけど。こっちは野口。ちょっと明智さんの話を聞きたくて人を探していたの。クラスメイト?」
「ああ、2年生…… すいません。明智ですか。友達が増えたんですね」
「貴方は友達?」
「いえ、後藤さんだけじゃないですか?友達は。変わっていますからあの子。まあ知っていると思いますが」
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