第24話 金髪ギャル

 最初はタメ口でドキッとしたが、こちらが2年生とわかると丁寧な口ぶりになった。悪い子ではなさそうだ。

「貴方は明智さんとは?」

「向井です。私は、あまり接点はないですね。ただのクラスメイトですね」

「向井さんね。了解。貴方から見て明智さんはどういうイメージ?」

「そうですね、よく言えば芯が強い、悪く言えば自己中心的でしょうか。意図的になのかはわかりませんが、空気を読むという能力がないんですよね。皆で放課後に体育祭のダンスについて話そうと言っても、興味ないと帰っちゃうとか。多分本当に興味ないだけで悪気はないんですよ」

「あー、やっぱそんな感じか。そうなると浮いちゃっているのかな?」

「うーん、別に浮いてはいないかもしれないですね。そういう子っていう話で。皆そういう風に扱っていますよ」

「なるほど、トラブルとかは起こしていない?」

「トラブル、ですか?」

キョトンとした顔の向井。ちょっと可愛い。


「あー、そういうタイプってトラブルになると自己主張が強くて面倒そうだなと」

「ああ、誰かと揉めたりってことですか。いや、それは聞いたことないですね。呆れたりという人はいるかもしれませんが、バチバチになった話は聞いたことないです。悪い子ではないと思うんですよね」

森田先生の説明によると、このようなタイプはトラブルになった時面倒という話だったが、明智はトラブルを起こすタイプではなさそうだ。

「なるほど、ありがとう。ちなみに掃除をしているのは先生にでも言われたのか?」

「いえ、趣味です」

「趣味?」

「ええ、教室が綺麗になるとなんか心が落ちつくんですよね。で、皆がいなくなった後に定期的に掃除しているんですよ」

「なるほどな。わかるよ。俺も部屋の掃除は定期的にしてる。特にテスト勉強前はしたくなるんだよなあ」

「私もです。じゃあ、もうちょっと掃除するので」

「え、ええ。邪魔してごめんなさい。ちなみに明智さんのことについて他に詳しい人いる?色々話聞きたいなと思って。後藤さんには聞いたんだけど」

「明智さん何かしたんですか?」

「いえ、そうではないけど。色々悩み事があるみたいでね。話を聞いてあげているの」

「ああ、そうなんですね。じゃあそういう意味だと…… 真逆の子に話を聞いたら何か違う話が出てくるかもしれないですね。うちのクラスで言うと富永っていう子がいるんですけど。LINE教えてもらえれば繋ぎますよ」

向井と上中はLINEを交換している。流石にここは女子の役目だな。俺は遠目でそっと見守ることにする。

「ありがとう。じゃあ良かったら富永さんに繋いでくれると助かるわ」

「わかりました。部活終わった頃に連絡来ると思います」


「とりあえず部活終わるまで時間潰す?」

「そうだな、部室でも行くか」

部室には部長が1人。目が合うと満面の笑顔になった。

「ちょうど良いところに来た。夏休みの予定を相談させてくれないか?」

「まだ決まってなかったんですか?」

「なんとなくは決めたんだが、自信がなくてね。誰かの意見を聞きたかったんだ」

 プロジェクターでワードファイルが投影される。

「えー、夏休みは部としての活動は一つ。展示会をやりたいと思う。後はBBQと海水浴だ」

「展示会ってなんですか?」

「夏の間に各々で写真を撮影して一枚選び、印刷する。それを飾って外部の人に見てもらうという企画だよ。面白いだろ?」


「へー。個人的には海水浴が気になりますけどね。どこ行くんですか?」

「あんまり展示会興味なさそうだね…… 海は熱海だ。電車で行こう」

「良いっすね。あんまり詰め込みすぎても良くないと思うんで、それくらいのイベントで良いと思います、な上中?」

「そうですね。良いと思います。それくらいなら兼部の人でも調整できそうですし」

「上中くんは何かしたいことはあるかい?」

「そうですねえ、スイカ割りはしたいですね。後、温泉入りたい」

「おお、温泉いいねえ。そう考えるとやっぱり熱海だな。これは決定にしよう。海は2年生にBBQは一年生に企画は任せるよ」

「部長は?」

「私は展示会に集中だ」

「なるほど」

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