第10話 アンチアイドルの声
朝練に向かう森下を尾行するも特に出来事はなし。ただ、また森下が躓いたので良いシーンをゲットした。
「わかっていると思うけど、動画消しなさいよ?」
「あ、ああ。流石にな」
と言いつつ、PCに保管しているのは内緒だ。いつか必要になる可能性があると言い聞かせている。
放課後、安達の席に向かう。サッカー部が始まる前なので軽くしか話せないそうなので端的に聞く。
「久しぶりだな。最近元気か?」
「ええ、まあ。けど珍しい組み合わせだね」
「最近上中とは仲良くなってな。で…… 色々と森下について話を聞きたいと思ってな」
「ああ、なんかファンクラブなんだって? 変なことしているね。野口はそんなタイプじゃないと思っていたけど?」
「まあ色々あってな…… で、森下と喧嘩したことあるって聞いたんだが本当か? 喧嘩なんて初めて聞いたよ」
「ああ、そうね。体育の時間でバスケで勝負して大げんか。こっちの接触が気に入らなかったらしくて怒鳴られたわ。こっちも負けるつもりはないから足踏んづけてやったら大乱闘」
「そういう経緯か。仲直りはしたのか?」
「一応ね。でもそれ以来話していないなあ。ファンクラブ会員に言うのもなんだけど申し訳ないけどあんまり彼女のことは好きじゃないのよね」
「ああ、そうなのか。一応理由も聞いてもいいか?」
「変に仲直りさせようとかしないでよ。もう生理的な話だから…… なんかこう、全てが完璧な感じがあまり好きじゃないのよね。喧嘩するような人間味もあるけどそれも含めて完璧、的な。そういった人はいるんじゃないかな?」
「ああ、育ちが違いすぎる、とかそう言う感じか?」
「そうね、それに近いかも。私たちのような苦労はすることなく成功しているんだろうなあと言う感じがね…… もちろん本人なりの苦労はあるんだろうけど、なかなか」
「喧嘩以来、話したりすることはあるの?」
「ないなあ。あんまり興味もないし、クラスも部活も違うしまあいいかなと。そもそも興味もないから別に反撃したいとも思わないのよね。もう特に関わることなく暮らしていきたいなあ、と言う感じ。向こうもそうなんじゃない?」
「なるほどなあ。じゃあまあ放置という感じか」
「そうそう。またトラブルに遭ったらわからないけど…… 今のところは興味なしね。幸いなことに男が被ることもなさそうだし」
「ああ、まあ男が好きなタイプとして似ている感じはなさそうだしな」
そんな感じかな、じゃっと安達は鞄を持って部活に行ってしまった。
「うーん、なんかハズレっぽいな」
「まあ、少なくとも安達さんの恨みの方向性もなさそうね」
「他にも森下と仲悪い人いるのかな?」
「そうね、それは探してみましょう。みなみにも聞いてみる」
「俺も三宅に聞いてみるわ」
…… 結論からするとどちらも「心当たりはない」とのことで空振りとなった。そもそも敵を作らない森下。部活関連でたまに感情をあらわにすることはあるようだが、それ以上は特になさそうだ。後は恋愛周りか…… 彼氏を取られて憎しみ、などか。
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