第16話 友達とは?

そのまま何のアイデアも浮かばず、次の日の朝を迎える。森下の朝練に付き合う必要はなくなったが、この数週間でついた早起きの習慣は残ったまま、早くに目が覚めたので学校へ向かう。


友達ならお互いフォローし合うもの? それともお互いに価値を提供できていればそれでいい? そもそも一緒に仲良い間柄だったら友達なのか? 友達ってなんだ? そんな思いが頭の中をグルグルしている中、通学路を歩く。


一見仲良い友達集団が、本音では他人に興味がないと考えると気味が悪い。が、高校というクローズドな環境で出来た友達ならそれくらいの関係性でしかないのかもしれない。

お互いを助け合う関係は素敵だが、そんな関係は理想論なのかもしれない。


「おお、早いじゃないか」

「おはようございます、先生も早いですね」

教室に着くとなぜか森田先生が教卓でPCを入力している。

「ああ、急ぎの作業があってな」

「職員室でやらないんですか?」

「もう終わらせれないといけない作業なんだよ。だからこっそりやってる」

 締め切りを過ぎた提出物だろうか。大人でも高校生と変わらないんだな、と思いつつ席に座り、勉強を始めることにする。


「…… さてと」

 作業が終わったようだ。森田先生が立ち上がる。俺はふと、先生なら何か別の視点でアドバイスをくれるのではと思い聞いてみることにする。

「先生、ちょっと質問があるんですけどいいですか?」

「ああ、授業の話か?」

「いえ…… 友達についてです。先生は友達ってどういう存在だと思いますか?」

「難しい質問だな…… 詳しく話してくれるか?」

 俺は森下の一件について簡単に説明する。誰もスカートが捲れていたことを教えてくれないこと、それはどうなんだろうと引っかかっていることを告げる。


「ああ、なるほどな。それで、彼らは友達ではないんじゃないかと思っているということか」

「はい」

「別にいいんじゃないか?」

「何がですか?」

「確かにそれだけを聞くと問題に聞こえるが、私が見る限りバスケ部は皆上手くコミュニケーションを取って活動しているぞ。森下の言う事に誰も反論しない、という風になっているわけでもない。可哀想だから言わない、そういう気の使い方をする子が多いということだろう」

「でも、それでも友達なんですかね?」

「お前の思う友達はそうじゃないのかもしれないが、私が思う友達の範囲には彼女達は収まっているよ。言葉の定義にこだわる必要はないと思うが。自分が助けたいと思ったら助ける、それでいいんじゃないか? お前も森下の友達だろ?」

「まあ、そうですが……」

「言いたいことはわからなくはないが、他人を変えることが出来る人なんていうのはほとんどいない。他人は変わらないものだ。コントロールできないものをコントロールしようとするのは疲れるだけだぞ」

「でも、じゃあ、どうすれば」

「お前が自分で行動すればいいんじゃないか? そういう友達にお前がなってあげればいい。せっかくだ。それ以上は自分で考えると。いいだろう」

 そういうと先生は教室から出ていった。


「お、おはよー」

「おはよう、今日は大丈夫だったか?」

「た、多分……」

「リュックサック辞めたらどうだ?」

「いやー楽なんだよね。荷物多いし手提げだと大変すぎるよ」

 少し恥ずかしそうな森下。


「そういえば、変なシーン撮影してたりしないよね?」

「ああ、動画は全部消したから大丈夫だ」

「ああ、変なシーンあったんだね……」

「まあさ……」

「?」

「別に気にしなくていいんじゃないか? ちょっと見えたくらいで何かが変わることもないと思うぞ。」

「まあそうだけどさ。恥ずかしいよ」

「そうか。まあそういうシーン見かけたら教えてやるから」

「男の子に指摘されるのも恥ずかしいんだけど」

「なるべくポップに教えてやる」

「そういう問題ではないよ」

 二人で笑い合う。


「でもありがとうね。お陰ですっきりしたよ。みおちゃんにもお礼言ったけど二人のお陰で助かりました」

「ああ、またなんかあれば言ってくれ」

「うん、お願いします!」

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