第14話 色々な誤算
試験も終わり、学校生活も残す所卒業式だけとなった。
今は山田と大学の一室で作業をしている。
山田が調べて来た情報を纒め、女の子リストの作成を手伝って貰っている。
「お前、手当たり次第行くのか。
見境無しだなぁ」
少しムッとしながらも聞こえないフリをして
僕は作業を進める。
山田は他の人にも聞いて調べてくれたらしく、その甲斐もあっておおよその女子生徒の全体数は把握できた。その数40人前後。
アキラカに関係無い人を除外していきたいが……それすら分からない。
「因みにお前の言っていた、学校来てない人は俺の調べた範囲ではイトウさん位だ」
「イトウさんが来てない事位知っているよ。
いつもの事だろう」
……あれ?
自分の言葉に引っかかる。
確かにイトウさんを学校で見てはいない。
いつもの事ではあるが、今は毎日探しているから当然それを知っている。
いやまさか、僕の探している人はイトウさん?
イトウさんに何故学校に来なくなったのか聞けば良いだけ?
ずっと考えていた筈のに、そんな簡単な事を僕は今迄気付いていなかったのか。
つくづく自分の至らなさにガッカリする。
リストは完成したが、使わずに終わりそうだ。
手伝って貰った山田に礼を言いながら、念の為リストをカバンに入れ一緒に外へ出る。
「あのさ、さっきの話何だけどイトウさんが学校来なくなった理由って知ってる?」
「あー、留年してるからじゃない?気まずいとか?」
山田はさらに続ける
「ただ不真面目なだけかもな。生まれた時から不良やってそうな性格だし、暴力沙汰で問題起こしたとか聞いた事あるな。
何だよ、お前あーゆーのが好きなのか?
やめた方がいいぞ。一度告白した俺が言うのもアレだがすぐ殴ってくるし、スタイルも残念だし。もっと良い人が他に……」
何か無茶苦茶言ってる。
一度フラれたのが余程悔しいのか。
「留年して今何歳なんだろう。30歳位なのかな?」
「留年は一年。でも24歳」
山田の声じゃ無い。
横を見るといつの間にかイトウさんが僕と一緒に歩いている。山田どこに行った?
驚きと聞きたい事が多過ぎて言葉に詰まる。
焦り過ぎてどうでもいい質問をしてしまう。
「山田は?」
「蹴り飛ばしたら逃げた」
しどろもどろになる僕に対して毅然とした態度で接してくる。
肝心な質問がイトウさんの気迫に押され言葉が出ない。質問が簡単とか言った自分はやはり浅はかだったかもしれない。
「取り敢えず退院おめでとう。もう大丈夫なのか?」
想定外の話をされ更に驚く。
見舞いにも来てくれたし案外良い人なのかも知れない。僕は見舞いの礼を言う。
「気にしないで、ついでだったから」
それはそうだよな、僕と接点殆ど無かったし、と納得しながらも病院で言っていた話したい事が何なのかを聞いてみる。
「あぁ、ここでは目立つので場所を変えたいが、今日はもう遅い。
悪いがまた今度だな……取り敢えずアンタの連絡先だけは教えて欲しい」
僕が連絡先を答えると、去ろうとするイトウさんに一番聞きたかった質問をする。
「留年の理由、教えてくれる?」
「さっきの私の歳の話?
大学には一浪で入学したけど、入学式のすぐ後にバイクで事故ってさ。半年以上休んで単位が足りなくなった」
「そうなんだ、暴力沙汰では無…」
そう言いかけてはっと言葉を呑んだ。
「喧嘩売ってる?
でも噂何て、いつも尾鰭が付いているものだよ」
そう言われて、学校に来なくなった女生徒の噂も大丈夫なのか心配になったが、やるしか無い。
「次に学校で会うのは卒業式だな」
「え?サボるの?」
「いや、赤点で再試験や論文とかのやり残しが無い限り学校なんて基本来ないよ。論文も終わってるし。もしかして私が赤点取るとでも?」
「そういう訳じゃ……」
と言いながらも衝撃を隠せない。
誤算だった。
卒業までに学校で聞き込みをする予定で居た。
人が居ない中どうする……?
しかし、流石に卒業式には皆集まるのか。もう後は無くなるがその集まりは使えそうだ。
何とかすればどうにかなりそうではある。
イトウさんと別れ、急いで家に帰りリストを見ながら対策を練る事にする。
卒業式に向けて。
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