第13話 真実を求めて

 退院に時間がかかってしまい、もう2月。

 今日から漸く学校へ復帰する。


 部屋にはあの日完成させたロボットのプラモデルが悲しそうに佇んでいる。


 このプラモを見る度にあの日を鮮明に思い出してしまうので何度も破棄しようかとも思った。

 しかし触る事すらも躊躇してしまいそのまま放置されている。

 その所為もあるのか劣化が激しい気がする。

 勿論プラモ作成もあの日以来していないし、する気にもなれない。


 先ずは卒業までに真実が知りたい。

 卒業まではあと一か月。

 就職は既にみや共々、そこそこ大きな企業から内定は貰っているので時間は全て調査に回せる。

 そしてちゃんと大学も卒業するつもりだ。

 

 みやの分まで、学生生活を最後まで送りたい。


 卒業までに真実を明らかにしなければ、二度と真実に辿り着く事は出来なくなる気がする。


 しかし調査の結果で、もしもみやの惨事が誰かの仕業なら……

 考えただけでも僕の中にドス黒い何かが湧き上がる。

 自分でも怖いので、なるべくその線は考えない様にする。


 気合いを入れて学校へ。

 先ずはイトウさんに話を聞く所から始めよう。


 …………どうやら今日は休みの様だ。


 いきなり出鼻をくじかれる。


 気を取り直して普通に授業を受ける。

 佐藤と山田にも会えた。

 それと無く先生達の話をしてみるが消えた2人以外、僕の知る限りの先生は健在らしい。


 ……しかし、授業が全く頭に入ってこない。

 テストも近いが、普段真面目に授業を受けていた為何とか付いていける。


 こんな状態で卒業出来るのか不安だ。


 授業の後は久しぶりにサークルに顔を出してみる。勿論情報集めの為だ。


 サークルの部屋を覗くと数人のメンバーが挨拶してくる。


 展示物を見ても、他のメンバーと話をしてもみやの痕跡だけが完全に消えてしまっている。


 ダメだ、辛い。ここに来たのは間違いだ。


 サークルのメンバーにはもう僕は暫く来ないと伝える。

 とは言えもうすぐ卒業、今辞めた所で大差は無いだろう。


 実は僕にとってサークルとは、プラモが作成出来れば何処でもよかった。

 あまり思い入れも無かったが、今は居るだけで辛い。

 みやはサークル内でも良好な人間関係も築いていた。

 僕はあまり得意では無かったが、プラモの技術だけで部長に……。


 人間関係?


 そう言えば消えた先生達の人間関係についてはどうなっているのだろう。

 親族や周りの人にも忘れ去られているのだろうが、和光先生の噂。

 確かセクハラされて学校に来なくなった生徒が居るという噂を聞いた事がある。


 先生が居なくなればその人はどうなる?

 普通に学校に通っているのだろうか。


 噂なのか真実なのか解らないが、この学校に来なくなった生徒を探してみるのもいいのかもしれない。


 しかし、そうだとして誰がその生徒の名前を憶えているのだろう。


 学校の女子生徒全員を当たってみれば……

 いや、女子が少ないとは言えかなりの人数はいる筈だ。僕に調べられるのだろうか。


 考えも焦りから纏まりにくい。


 ダメなのかこの案は。


 ダメ元で女子のことに詳しそうな山田に相談してみる。


「え?お前この時期に彼女探し?

 ま、まぁいいけど抜け駆けは無しだぜ!

 俺達は4年間ずーっと女っ気無しで頑張ってきた仲だろ!俺も一緒に探すよ」


 女っ気無し……か。


 色々勘違いもあるみたいだが、どうやら手伝って貰えるみたいだ。

 在学女生徒全体の人数だけでも調べてくれると嬉しい、けど……。


 山田の充分すぎるやる気に一抹の不安が残る。

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