第12話 目覚め

 「……何処だ、ここは?」


 自分が何処にいるのか、何をしていたのか全く分からない。

 周りを見る限りここは何処かの病院らしい。

 腕には点滴をされてる為、あまり動く事もできない。

 状況を確認する為ナースコールを押す。


「あっ、目が覚めたんですね、よかった!

 もう一週間以上も眠ってたんですよ」


 どうやらここは家の近くの総合病院らしい。

 日付は……一月半ば。


「お連れの方もう少しで見えますので、待っててくださいね」


 一体誰だろうか。

 暫くすると聞き覚えのある懐かしい声と共にその人物が部屋に飛び込んで来た。


「京!やっと起きたのね!心配したんだよ」


 母だった。僕は実家からかなり離れた大学に通っている為、わざわざ来てくれたらしい。

 母に心配をかけたお礼を言いながらも1番気になっている質問をする。


「ねぇ母さん。僕の幼馴染のみやって子覚えてる?」


「みやちゃん?

 さぁ……記憶にないわね」


 やはり覚えていない、か……。家族ぐるみの付き合いをしていたはずなのだが。

 どうやら悪夢からは覚めていない様だ。


「そう言えば何人かお見舞いに来てくれてたよ。男の子が数人と、女の子も1人何度か来てたよ。京も中々隅に置けないわね」


 みや以外の女の知り合い?

 誰なのか見当が付かない。

 母に名前を聞いてみたが、母も会った時に名前を聞いたらしいが忘れてしまったらしい。一体誰なんだろう。


「しかし京。無事だったからよかったけど、ちゃんとご飯食べてる?また家に篭ってプラモデルばかり作ってたんでしょ。全く……」

 よくあるお母さんの会話だ。


「いつ、退院出来るのかな?」


「特に怪我はないから、日常生活が出来るなら目が覚めて一週間かからないかもとは聞いたよ」


 一週間か……まだ色々調べなきゃ行けない事がある。

 しかし調べて真相が分かったとしても

 みやはもう戻っては来な……


 今になって涙が溢れて来た。

 母は驚いて看護師さんを呼んでいる。


「いや、母さん、呼ばなくても大丈夫だから」


 そう言いながらも涙が止まらない。

 僕にとってみやの存在って、ただの幼馴染だけで無く何か特別な存在だったのかもしれない。

 思えばいつも隣で微笑んでくれていた。

 たまに喧嘩する事もあったけれど、いつもその日の内に仲直りしていた。

 ダメだ、思い出せば思い出す程涙が更に溢れてくる。

 みやはあんな状態でも最後の最後で僕に自分の気持ちを打ち明けてくれた。

 しかしその僕は、何も答えられず狼狽える事しか出来なかった。

 僕は……僕は……。


「ハッ……女々しいねぇ。

 昔の彼女の事を思い出して泣いてるのか?

 情け無い男だ」


 泣きじゃくる僕に声をかけたのは……

 何とあのイトウさんだった。

 母が「見舞いに来てくれてたのはこの人だよ」とそっと耳打ちしてくれる。


 くっ……アンタに何が判る!と言いたい所だが図星を突かれた所もあり反論の言葉も出て来ない。


「泣いてる暇があるのなら、とっとと身体治して学校に出ておいで。話したい事もある」


 話したい事?僕とイトウさんはそもそも殆ど話した事近いが……。


「じゃあ、待ってるからな」

 そう言い残して帰って行った。


 そうだ、今はとにかくみやの為にも真実を明らかにしないと。今自分のできる事はこれしかない。


 そう思った側で

「さっきの子、いい子ね。私の若い頃にそっくりだわ」

 また母が変な事言ってる……。

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