第11話 長い一日
どれ位の時間がたったのだろうか。
みやの部屋で茫然とし続けていた。
しばらくして漸く動ける様になっては来たが、眩暈と吐き気はまだ酷い。
「そうだ警察だ……警察呼ばなきゃ」
朦朧とする意識を奮い立たせ警察を呼ぶ。
すぐに警察は到着する。
気分は最悪だが、何とか状況を説明し、そのまま警察署に行く事になる。
しかし、何故か僕の話は一切聞いてもらえず、すぐに解放される事になる。
警察には全く取り合ってもらえず、訳がわからない僕は、さっきの出来事を確かめにみやの家に向かう。
ただの悪夢だったとしても今はあの場所にはあまり行きたくも無いが、もしかするとみやが何事も無かったかの様に出迎えてくれるかも、と言う少しだけの可能性を期待して。
みやの家に入る。
勿論誰も出迎えてはくれない。
部屋の中はお金だらけで家財道具も一切存在しない。
あんなに沢山あった子供の玩具も一切無い。
僕は「ここに住んでる幼馴染のみやが誰かに殺された、みやの遺体もそこにある」と警察に主張した。
しかしみやの遺体も無ければこの部屋も空き家で誰も住んでいない事になっていたらしい。
部屋のお金は二千万円以上落ちていた様だが、その中にも、部屋のどこにもみやは居なかった。
ただの僕の悪戯として処理されてしまった。
空き家に入ってのこういう悪戯は、今回は特別に見逃すがお金や私物を纏め早々にこの家から立ち去る事、と警察から厳重注意を受ける。
訳もわからず部屋に散らばった小銭やお札等様々なお金を纏め、かなりの重さだが取り敢えず荷物全てを自分の家に帰る。
気は進まなかったが念の為現場を写真に収める。
色々あり、色々考え、結局一睡も出来ずに次の日を迎える。
学校をサボり、朝からみやのおばさんの家へ向かう。
昨日何度も電話したが夜遅かった為か、全く連絡がとれなかった。
呼び鈴を鳴らし、中から見慣れたいつものおばさんが出てくる。そして僕の顔を見るなり話しかけてくる。
「どちら様ですか?」
…………。
何かがおかしいが、何故かその答えは何と無く予想は出来ていた。
僕の名前を名乗るも昔何度か会った事ある程度の事しか覚えていない。
みやの話をしても、おばさんはみやの事を知らず全く話が噛み合わない。
仕方無く自分の家へ戻る。
途中、学校帰りの山田と佐藤に出くわす。
恐らく今の僕は酷い顔をしているのだろうが、2人に話をする。
「みやが……みやが死んでしまった。
昨夜、誰かに……」
山田も佐藤も顔を見合わせ、佐藤が口を開く。
「そうか、知り合いが事件に巻き込まれたのか。辛いだろうけど元気を出せよ」
「俺達でいいのなら気分転換にはいつでも付き合うぜ!」
と山田も続ける。
「な、何言ってるんだよ?
みやだよ?みやの話だよ!?いつも一緒に……」
僕のセリフを遮るように山田が
「また昨日の悪ノリか。2日連続でそんな事言ってたら流石に俺達も怒るぞ。そんな人俺は知らない。佐藤は?」
佐藤も知らないと言う。
知らないと言う山田の台詞を聞いた瞬間殴りたい気持ちにもなったが、本当に知らないのだろうか。
「そうか、2人とも……覚えてすら居ないんだな……」
あまりに普段通りの、大事な事だけがすっぽりと抜け落ちた2人の会話。
どうしようもない事実に歯痒さと、それを上回る自分の無力さと絶望感を感じながら周りがぐるりと回っていく。
身体に力も入らなくなって来た。
僕の身体は腰から崩れて僕はその場に倒れた……。
薄れ行く意識の中で佐藤と山田が人を呼んでいるのがわかったが……
悪夢よ、覚めてくれ……
僕はそのまま意識を失った。
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