第7話 変わらない生活

 呼び鈴を押すとみやはすぐに僕を部屋に入れてくれた。


 おばさん達はまだ来てないらしいが、部屋中には沢山の玩具がある。

 子供達の物なのか、この前より増えている気がする。


「最近おばさんと子供達よく来てるの?」


「いや、この前京ちゃんと会ってから来てないよ」


「この玩具は?」


 この部屋の玩具の数、とても女の子一人暮らしの部屋とは思えない。

 何か趣味で収集し始めたのかな?


「あー、勿論子供達のよ。いつの間にか部屋にあったんだけど、子供達が何処からか持って来てたみたい。私は買ってあげて無いよ」


 勿論僕も買ってあげてない。

 おばさんが買い与えたにしては随分と子供に気前がいい。


 そんな話をしていた時、呼び鈴が鳴る。

 おばさん達だ。扉を開ける前から子供達のはしゃぐ声が外から聞こえる。


「いらっしゃい、待ってたよ」

 暗かったみやの顔が一気に笑顔で明るくなる。

 やはり親族の力は凄い。

 そしてみやがおばさん達を迎える。


「珍しいわね、みやから私達を呼ぶなんて。

 お邪魔しますねー。

 あ、京くんも来てたんだ。いらっしゃい」

 

 僕も挨拶を返す。


「あ、お昼はもう食べた?

 子供達は先に食べたけど、今から作ろうか?」


 「お願いします」とみやが頼む。


 子供達はこの前の杖が気に入ったのが、未だにずーっと遊んでるので、昼食を大人3人で食べる。


「みや、今日はどうしたの?

 急にお金が無いだなんて。

 あなたにしては使い過ぎて足りなくなるなんて珍しいわね」


 え?

 確かにしっかり者のみやがそんな失敗するなんてとても珍しい。


「え、あ、あの……ちょっと」


 僕を気にしてる様だ。気まずそうなので食事の途中だが席を立とうした時、おばさんに止められる。


「実はわからないの。今までと同じ過ごし方してたのにお金が突然なくなっちゃって」


「泥棒に入られたとか大きな買い物したとかもないよね?」


 みやは勿論無いと返事をする。 


「この玩具は?」

 おばさんが尋ねる。


「これおばさんが買った物じゃないの?」

 逆にみやが驚く。


「私しゃ知らないよ。子供の為とはいえ、こんなに沢山おもちゃ買ってあげる事はないよ」


「京くんもそんなに玩具買わなくていいから。

 あとたまにみやも変な事するからいつも見てあげてね。みやをよろしくね」


 おばさんには僕が玩具買ってあげたとおもわれてる?

 僕は言われるがままわかりましたと返事する。


「そう言えば京くんは大学卒業後どうするの?」


「就職しようと思ってます。

 既にみやと同じ企業に内定貰ってます」


「そっか!それは良いことだけど学生生活ももう終わりだよ?

 来月にはクリスマスもあるし、色々予定とか無いの?」

 

「何も無いです」僕は即答する。


「う、うん……」みやが口ごもる。


「ふぅーん……」おばさんが疑いの眼差しを向ける。

 まぁ就職も大事だけど学生時代最後のクリスマスも大事よね。ねぇ京くん」


「え?、は、はい」


 しかし今日はやたら突っ込まれるなぁ。


 元々みやのおばさんは、僕が子供の頃みやと仲良くしてたのをキッカケに家族ぐるみの付き合いになった。

 それが今ではこんな所まで切り込んでくる仲ではある。


 何だか色々気まずくなってきたのでみやを残して子供達と遊ぶ事にした。


 子供達は相変わらず、ずっと玩具を持って暴れているが、玩具について聞いてみる。

「ねぇ、このおもちゃどうしたの?」


「なんか知らないけどお家にあったから遊んでるんだよーお兄ちゃんも一緒に遊ぼうよ」

 結局分からず終いか。


 子供と遊んでいるとあっという間に時間が過ぎていく。

 そして夜ご飯の時間もカレーも戦争がはじまる。

 結局落ち着くことないまま帰る時間に。


「京ちゃんばいばーい」


「私またそこまで送ってくね」


「またね、京くん。みやをよろしくね」



 今日も慌ただしかった。


「うん、ちょっと公園行かない?」

 僕はみやに連れられ近くの公園へ。


「みや、気分は大丈夫?」


「さっきよりだいぶ良くはなったけど……

 子供達の顔見たらだいぶ気が楽になったよ。

 でも……私達はこの先ちゃんと2人揃って卒業出来るかな?」


「どうしたんだよ、急に」


「いや、なんか不安になっちゃって。

 普通に卒業して、出来れば京ちゃんと同じ所で働きたい」


「もう内定貰ってるし、普通にしてれば卒業も出来るよ」


「普通って何かな。今日のが普通?」


「あれは……何だったんだろう。暫く様子見てみようよ」


「うん、京ちゃんがそういうのならそうする。

 一緒に卒業したいものね!」

 何だかみやがとても可愛く思えてくる。


「京ちゃん、今日は色々ありがとうね。

 あのね、色々考えたんだけどクリスマスの日、暇かな?」


「あぁ、予定は空けられると思う」


「また私の家、来てくれるかな?」


「いいよ、いつでも遊びにいくよ。また子供達と何して遊ぼうか」


「違うの。子供達は来ないわ。私だけ。迷惑?」

 みやの顔は夜の暗さで何も見えなかった。


「大丈夫だよ、あけとくね」

 僕はわざとそっけない返事をする。


 心なしかみやが喜んでいるようにも見えた。


「じゃあ、約束ね。おやすみなさい」


「おやすみ」


 いつまでも見送るみやを何度か振り返り、遠目に見ながら公園を後にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る