第4話 文化祭の戦利品

 適当に買い物を済ませて家に帰ると、みやとの約束の時間までもう時間がない。

 仕方無く作成中のプラモには手をつけず、自分の家を後にする。


 みやの家に着き呼び鈴を鳴らすと、いつもの様にみやが笑顔で出迎えてくれる。

 ……と同時に部屋の中から子供のはしゃぎ声も聞こえてくる。


「あ、きょうちゃんだー!こんばんは」

 子供達も走って出迎えてくれる。


「今日お姉ちゃんから新しいおもちゃ貰ったんだ!一瞬に遊ぼ!」


「あそぼあそぼ」


 2人の子供達はいつになく元気だ。

 子供に引っ張られ部屋の中に入って行くと、既におばさんが食事の準備をしている。


「あら京くんいらっしゃい。いつもありがとう。今日も夕食沢山食べていってね」


 おばさんにお礼を言うが、言い終わる前に子供に連れて行かれる。


 子供達はさっき学校で買った新しい杖の玩具に夢中だ。ブンブンと振り回したり、何やら変身の呪文の様な物を唱えたりして遊んでいる。

 

 その謎の遊びに散々付き合わされた後、夕食をご馳走になる。

 自分の親が作る食事ではないが、昔から頻繁にご馳走になっているので、いつ食べてもとても懐かしく美味しい。


「今日もご馳走様でした。いつも美味しい食事をありがとうございます」

僕はお礼を言って食事を終えた。


「私も手伝ってるんだから、当然でしょ」


 みやが得意気な顔をしている。

 確かにみやはおばさん程では無いがそこそこ料理は作れる。見た目はあまり良く無いが。


 はいはい、すごいねーとみやをそれとなく褒めているとおばさんが話しかけてくる。


「京くんありがとう、玩具買ってくれたんだってね」


「いつもお世話になっていますから、たまにですがそのお礼です」


「ありがとう。いつもすまないねぇ」


 僕達は他愛も無い話をしながら食事を済ませる。気が付けばもういい時間だ。


「今日はそろそろ御暇させて貰いますね」


「京君、子供達も喜んでるし、私達も助かってるよ。

 よかったらまた遊んであげてね。気を付けて帰るんだよ」


「京ちゃん、すぐそこまで送ってくよ」

 いつもみやが外まで送ってくれる。


 そして、帰り道。


「京ちゃんいつも来てくれて嬉しいけど、お話しする時間無くてごめんね」


「ちょっと残念だけどいつも学校で話し出来るから大丈夫だよ」


「ホントにごめんね。

 でもこうして2人で歩いてると恋人同士みたいだよね、えへへ」


「変な事言ってないで、ここらで大丈夫だから」


「じゃあ、おやすみなさい。また学校でね!」

 みやに手を振り別れた。


 元々二人の家はあまり離れてないのですぐに自分の家に着く。


 漸く帰って来られた。


 「さて、さっきのプラモ作成の続きを……」


 そこでハッと気付く。


 ナイフを買うのを忘れてる!!


 折角外出したのに目的忘れて関係無いものばかり買って帰って来てしまった。

 しかし夜ももう遅い。今から買い物に行くにはちょっと躊躇われる時間だ。今日は諦めて明日買いに行くか……等と思っていたがよくよく思い出してみると学校で一本ナイフを購入した気がする。


 気が進まないが、購入した金色ナイフを仕方無く使ってみる。


 …………!!


 意外と持ちやすく、想像以上に切れ味も良い。

 もしかすると今迄使っていたナイフより良いかもしれない。


 耐久性は良く分からないが、あの値段ならもう何本か買ってもよかったかも知れない、等と思った。

 ……でも、確か最後の一本だったな。

 こんな掘り出し物があるのならもっと早くに文化祭行っておけばよかった。


 かなりの切れ味に興奮しながら深夜遅くまで作業を一気に進める。

 結構な使い方をしているが、依然切れ味も落ちる気配は無い。

 ナイフの切れ味が良いだけでこれ程作業効率が変わって来るのかという程作業が進んだ。


 寝る前に一息入れながら部屋を眺める。


 あ、一円玉が落ちてる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る