第2話 文化祭

 模型サークルの展示室まで来てみたが、行列が出来ていてとても入れそうに無い。

 中では何が展示してあるのかも判っているし、もう帰ろうかと思っていた時、


「京ちゃん!こっちこっち」


 僕を呼ぶ声が聞こえるが、聞こえないフリして、そのまま帰り始めると……


「京ちゃん!来てくれたんだね、人が多くて大変なの。手伝ってよ!」


 声の主はすぐ側まで来ていた。


 このとてもスレンダーな彼女は幼なじみのみやだ。

 言動に対してテンション低めで喋るみやは昔からいつもこんな感じだ。

 別に彼氏彼女の関係でも無いし、みやに対してそういう感情は一切抱いてない。ただ昔から家族ぐるみの付き合いがあるだけだ。

 この大学は理系の大学で、女子も数える程しか居ないのに嫌いな理数系の勉強をして態々僕と同じ大学に入ったらしい。

 まぁ噂で聞いたので真偽は判らないが。

 ただ、僕と同じ模型サークルにも入って来て、部員としていつも僕をサポートしてくれている。


「手伝う?

 今回は作った模型を展示してるだけだから大変な事も無いだろ?」


「お客さんに色々質問されるけど、細かい事への質問が多くてよくわからないの。この列も殆ど京ちゃんの作ったジオラマ見学の列だし……京ちゃんも部長なんだし助けてよ」


「正直、模型等作るのは好きだけど、それが皆に受けても受け無くても興味ないんだよね。

 僕は僕の好きな様にやり続けたいだけ。

 模型で表現してる物をわざわざ説明するのも好きじゃない」


「もー、いつもそうなんだから……」


 みやに何度もこの話をしてるので、彼女も既に諦めてる様だ。


「ごめん、急いで買わなきゃいけない物があって今から行かなきゃ行けないんだ」


「ふーん……じゃあ私も行く!」


「え?忙しいんじゃ?」


「少しくらい大丈夫だよ、何処かの部長さん以外のサークルメンバーは全員居るし!」


 少し嫌味を混ぜながらみやは強引に僕の腕を取り、腕抱く様にして歩いていく。

 僕の腕がみやの胸に押しつけられる。


「くっつくなよ、目立つだろ!しかも気持ち良くも無いし!恥ずかしい」


「いつもと同じだから今更目立っても問題無いでしょ?

 それに何よ?気持ちよく無いって失礼ね!」


 そんな話をしながらそのままキャンパス外の物販辺りに歩いて行く。


 しかし、いつもこんな状態でいつも歩かされてると女子の少ない大学内では本当に目立ち過ぎて恥ずかしい。

 みやはその数少ない女子と言う事もあり、他の男子にもある程度の人気あるらしい。

 あまりベタベタされるのも誰かに命狙われそうではある……。


 その時ふと、知らない女の人とすれ違う。


 長い髪。


 すらっと伸びた長い足。


 そして綺麗な指。


 恐らく自分の人生でこれ程綺麗な人は見た事が無い。有名なモデルさんなのだろうか?


「今の……うちの学校の人じゃ無いよね?

 何か、凄く綺麗な人じゃなかった?」


 みやはムっとしながら

「こんな美女と歩いてるのに今度は他の女?

 最低ねー」


「いや、今の長い黒髪の人……見てない?」


「見てない!」


 どうやらみやの機嫌を損ねてしまった様だ。

 面倒くさいなと思いながらも一応謝り、

 一緒に歩いて行く。


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