第25話 僕の日常

 とある夜。僕は待ち合わせ場所に居る。


 いつもの3人の予定が合う時には、よく仕事終わりに待ち合わせて皆で飲みに行っている。

 今日もこれからその飲み会だ。

 仕事後、とある企業前で待ち合わせている。

 このビル1Fには喫茶店などが入っており、待ち合わせには丁度いい。


 僕がビルに入ろうとした時、ビル前の大通りを遠くからバイクが走ってくる。

 その横から強引にトラックが割り込んでくる。

 何とかぶつかりはしなかったがバイクはバランスを崩し、減速して歩道寄りに倒れる。


 乗っていたのは女の人で、バイクが大きい為立て直すのに手間取っている。


「大丈夫ですか?手伝いますよ」

 と、僕は助けに行く。


 バイクの人はバイクスーツ姿の髪の長い女の人だった。一緒にバイクを立て直す。


 バイクの女の人は素っ気なく

「ありがとう、助かったよ」

 と一言お礼を言って行ってしまう。


 その時後ろから僕を呼ぶ声が聞こえる。


「京ちゃーん、どうしたの?」

 みやが駆け寄ってくる。


「いや、浮気とかじゃないよ?ホント!」


「分かってるよ。バイクの人助けてたんでしょ?でもあの人、イトウさんだったよね。偶然かな?懐かしいなー」


 僕はみやに尋ねる。

「イトウさん?誰だっけ?」


「ほら、大学の時居たでしょ?」


「あ……あー、噂は聞いた事あるけど……会った事は無いから分からなかったよ」


 とは言え噂ははっきりと覚えている。

 イトウさんは和光と言う先生に嫌がらせを受けて自殺した友達の為に、1人で戦って和光を辞職に追い込んだ人だった。


 その後、和光は未成年に手を出した罪が明るみに出て、警察に捕まりはしたがそのまま自殺してしまったらしい。

 当時結構大きく色んなメディアに所に取り上げられ、普段静かな大学生活があの時だけはかなり騒々しくなったので恐らく知らない人はいないだろう。


「そっか、覚えてないか……」

 そう答える僕に何故かみやは寂しそうな顔をしている。


 その時後ろから声が別の聞こえる。


「おいおい、人が急いで残業終わらせて来たのに会社の前でいちゃいちゃかよ。せめて私の前では普通にしてもらいたい物だ」


 なぎだ。


 僕達昔の仲間同士で大学卒業後もこんなふうに待ち合わせてよく飲みに行っている。

 僕はみやと部署は違えど同じ職場だが、なぎとは違う職場で働いている。

 なぎの職場は日本ではかなりの有名大企業だ。僕達とはレベルが違う。

 それでも昔の馴染みという事で今でも良き友達だ。


「京ちゃん!なぎさん!早く行こ!お腹空いたよー」


「じゃあ行こうか」


 みやとは社会人になってから付き合い始めた。

 大学最後のクリスマスの日に大喧嘩をしてしまい、卒業まで殆ど口も聞かなかった。

 何故あれ程までの喧嘩になったのか、記憶はあやふやだけど、確か僕のプレゼントした服が気に入らないからとみやが大激怒。

 確かそんな感じだった。


 今は仕事が忙しくあまり時間に余裕が無い生活を送って入るが平凡でありながらも、みやという彼女と付き合える出来る幸せを、毎日噛み締めながら生きている。

 そして恐らくこれからも変わらずに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る