第22話 一つの結末
「京ちゃん!京ちゃん!!」
誰かが僕を呼んでいる。
身体がなんだかとても暖かい。
眠っていたのだろうか。朦朧とする意識がはっきりして来る。
「京ちゃん!起きた!良かった、良かったよー!!」
みやが僕に抱きついている。
「京ちゃん!何度呼んでも目を開けないから心配したんだよ!」
みやはポロポロと涙をこぼして泣いている。
僕の意識は更に徐々にハッキリとしてくる。
しかし、今まで何をしてたのかは覚えていない。
この状況……
裸のみやが裸の僕に抱き付いてる。
僕とみやってこんな関係だっけ?
「みや……なんで裸なの?」
みやははっと我に帰る。顔を真っ赤にしてその身体を隠す。
「京ちゃんのエッチ!」
「何の話だよ、僕も何故か裸なんだけど、服返して?」
「知らないよ!エッチ!!」
「いきなりエッチとか言われてもこっちも何も判らないよ!
そもそも、そんな貧相な身体見ても何とも思わないから大丈夫だよ!」
「ひっどーい!私だって……」
そこまでいいかけたみやは急に薄笑いを浮かべる。
「はっはーん。その貧相な身体を見てそんなにしてるのは何処の誰よ?」
みやは僕の顔では無く、下の方を見ながら勝ち誇った顔をしている。
「えっ!?いや違うよ、これは!男は寒いとこうなるんだよ!それよりもその貧相な身体なんとかしろよ!普通の人よりも風邪引き易そうだぞ」
「京ちゃんのバーカ!」
そう言いながらみやはまた恥ずかしそうにビルの屋上の陰に逃げ込む。
そしてみやは何やら杖の様な物を振りながら
「私の服!私の下着!」と叫んでいる。
勢いあまって振り回していた物を叩きつけてしまい、派手な音と共に何かが砕けて飛んでいく。
「きゃーーー私のつえーーー」
何をしてるんだろう……?
暫くして、どうやったのかは判らないが、みやは僕の服を用意してくれた。
僕とみやは服を着ながら状況を確認する。
しかし、ここは何処なのか判らない。
何故僕達はここに居るのか判らない。
目の前には見た事のない大きさのプラモデルがある……。
これは凄いなぁ。こんなの組み立ててみたい!持って帰りたいけど、流石にマズそうだしバレるよね……?
プラモに釘付けになっている僕にみやが色々話しかけてくる。
みやの話によると、どうやらイトウさんもさっきまでここに居たらしい。
詳しく聞いてもみやの記憶もあやふやらしい。
「イトウさんか、懐かしいなぁ。
大学時代に居た人だよね?結局殆ど話さずに卒業してしまったなぁ」
「え?京ちゃん、何言ってるの。さっきイトウさんと話してたでしょ?私見てたよ」
「いや、知らない。学校卒業してから一度も会った事も無いよ」
みやは突然考え込んでしまった。何かまずい事を言ってしまったのだろうか。
「いや、いいの。忘れて」
「何だよ、気になるなぁ」
「取り敢えず……帰ろっか」
「うん、帰ろう」
……ところでこのビル、どこから降りるんだろう。
2人はビルの屋上で迷っている。
みやが、エレベーターがあったと言い張る場所には何も無く、他の何処を探してもエレベーターは見当たらない。唯一ある扉も鍵がかかっている様で開けられない。
「どうしよう……今日はここで野宿かも……」
「ええーっつ!私帰ってお風呂入りたいー!」
みやの悲痛な叫びを聞きながら、途方に暮れる2人だった。
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