第24話 百合百合の百合

 【魔剣】

 Lv:60

 攻撃力:9000

 硬質力:6000

 属性:闇、光、火、風、水、土。

 魔法:New:防御シールド

 固有能力:並列思考 魔力耐性 物理耐性 身体強化 視覚強化 痛覚耐性。

 特殊スキル:足音無音 気配察知 瞬歩

 大銭稼ぎ(ごくまれにお金がもらえる)。討伐対象:ゴブリン

 硬質(一時的に魔剣を硬質化させる)。討伐対象:オーク。

 飛行(一時的に飛行する)。討伐対象:ハーピー。

 美声(イケメンボイスになる)。討伐対象:不明、スライム。

 魔法糸(粘着性の糸を出す)。討伐対象:スパイダー。

 模倣(一時的に技を真似る)。討伐対象:ミラー。

 完全無敵防御(10秒間の間、全ての攻撃を無効化する。再使用時間は従者の魔力に比例する。現在:10分)


 

 魔剣のレベルが順調に上がっている。

 学校が始まったことで、魔物討伐はあまりできていないが、その分、技術が向上しているのは間違いないだろう。


 いくら剣が強くても扱うのは俺だ。

 あくまでも補助として考えなければならない。


 ルビィを助け、ドラゴンを退治、アクアを最下位から脱却させることに成功した俺は、ふたたび新しいフラグに取り掛かっていた。


 だが今回は高難易度だ。


 理由は明確で、魔剣が役に立たないからである。

 いくら強くても関係がない。


 なぜなら――。


「デルクス、なぜ知っているのですか?」

「俺は観察力が高いんだ」

「でも、どうして応援したいのですか?」


 図書室の物影、俺、ルビィ、エマは縦並びでひょっこりと顔を出していた。


 視線の先で本を読んでいるのは、同級生のルナ・ダイアル。

 ピンク髪のショートカット、眼鏡をかけた大人しい女の子だ。

 

 座学の成績はトップクラス、戦闘は中の中くらいだろう。


 しかし彼女は将来、オリヴィアの参謀として活躍する。

 持ち前の頭脳を生かし、次々と敵を打ち負かす軍師みたいな感じだ。


「いつ現れるのですか――」

「しっ、来たぞ」


 ルビィがしびれを切れ仕掛けたとき、現れたのは――。


「ここ、座っていいかしら」

「……どうぞ」

「ありがとう」


 長い茶色の髪、整った目鼻立ち。

 同じく同級生のエヴィル・リング。


 二人は絶妙な距離感で前後に座った後、真剣に本を読んでいる。

 内容は魔法学の小難しいヤツだ。


 しかし俺は知っている。


 あの二人が、何を考えているのか。


 ルナ「うわああああああ、エヴィルちゃん。近い近い近い近い――はあはあ、花みたいないい匂いする。凄い可愛い、まつ毛も綺麗だぁあああ」

 エヴィル「うわあああああああ、前に座っちゃった。どうしよう、変な子って思われてるかな? うわあああああ、どうしよおおお話しかけたいよおおおおおお。ルナちゃんかわいいよおおおお」


 という風に。


 そう、彼女たちは――百合なのである。


「距離は近いけどなかなか話さないですね」

「ああ、葛藤してるんだ」

「デルクス様、もしかして心が読めるのですか?」

「ちょっとだけな」


 原作であの二人はオリヴィアと友達になる。

 そしてイイ感じの距離感のまま戦い、助けられ――叶わぬ恋で終わる。


 俺はいつこの二人が百合百合するのか楽しみにしていた。

 いや原作をプレイしていた連中もそうだろう。


 しかし――最終エンディングまで二人は結局何も言わないのだ。

 それはもうゲーム機をぶん投げそうになった。


 実際に投げたやつもいるだろう。


 だからこそ俺はそのフラグをぶち壊したい。


 つうか、百合百合を見せてくれ。


「ルナさん、その本、面白いですか?」

「……それなりに」


 ルナ「うわああああああああ話しかけられたのに変な言い方しちゃったよおおおおおおお。どうしよおおおおお。ごめんねごめんね」

 エヴィル「うわあああああああああ、絶対なんだコイツって思われてるよおおおおおおおお。ああああああ、ミスったあああああああああ」


 さて、どうするか。

 

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