第6話 魔剣レベル20
おれがデルクスになって半年が経過した。
日々同じことの繰り返しだったが、それだけじゃ語れないほど、
「ハァッ!」
「うふふ、デルクス様。いいっ! いいですねっ!」
中庭兼、修練場。
嬉しそうな笑顔で、リミットさんが俺の剣をさばいていく。
前後左右、魔剣との相性が良くなってきたのか、手によく馴染む。
「流石です、デルスクス様、短期間でここまでとはっ!」
そういいながらも、リミットさんは俺よりも随分と速い。
そのとき、とてつもない一撃を食らいそうになり、俺は、飛行能力で一時的に空を飛んだ――。
「ふふふ、いいですね」
一気に反転、空から攻撃を仕掛けるも――。
「――惜しいです」
ギリギリで回避されてしまい、返しざまにレイピアをこつんと当てられる。
ああ、負けた……。
「勝てたのは十本中三本か」
「あら、それがどれだけ凄い事かわかってますか?」
まあ、たしかにそういわれてみればそうか。
原作でリミットさんは
それはもちろん、この手の魔剣のおかげだろう。
レベルは、既にかなり上がっていた。
レベル10になった時点で普通の剣のようになり、今は禍々しい魔力を帯びている。
大剣になったらどうしようと思っていたが、今のところその気配はない。
【魔剣】
Lv:20
攻撃力:3000
硬質力:3000
属性:闇、光、火、風、水、土。
固有能力:並列思考、気配察知、瞬歩、魔力耐性、物理耐性、身体強化
特殊スキル:
中銭稼ぎ(ごくまれにお金がもらえる)。討伐対象:ゴブリン
硬質(一時的に防御を高める)。討伐対象:オーク。
飛行(一時的に飛行する)。討伐対象:ハーピー。
美声(イケメンボイスになる)。討伐対象:不明、スライム?。
魔法糸(粘着性の糸を出す)。討伐対象:スパイダー。
模倣(一時的に技を真似る)。討伐対象:ミラー。
と、ステータスを確認してみたがとんでもない量だ。
だが問題は、俺自身のレベルと合わせて特殊スキルの習得にも限界があることを知った。
つまり今の段階ではこれ以上魔物を狩ってもスキルが得られない。
特に飛行を得たときは、戦い方が180度も変わった。
ずっと飛び続けられるわけじゃないが、攻撃も回避も格段によくなった。
中銭稼ぎは、たまに100ゴールド落ちてくる。
現実世界でいえば120円くらい。特訓一回で飲み物が買える計算だ。以前よりもだいぶいいが、真剣勝負のときは少し邪魔だったりする。
まあでも、最悪ホームレスになってもこれで生きられることが確定した。
模倣に関してはまだ扱いが難しく、発動しないときもある。
美声については説明の必要もない。
ただしこのスキルは魔剣を手にしていないと使えない。
それはやはり、この世界がソードマジックファンタジーだからだろう。
レベルあげ、スキルも増えていけば、とんでもないことになるはずだ。
「デルクス様、汗をお拭きしますね」
「ありがとう、エマ」
特訓が終わると、エマがいつも駆けつけてくれる。
本当に優しい子だ。
屋敷についてもしっかりとしてくれているので、あまり口出しすることはない。
まあ、原作知識でズルを教えることはあるけれども。
少し休憩した後、リミットさんが声をかけてきた。
「そろそろ
以前から言われていたが、学園の入学に備えてナニカをするらしい。
ついに準備が整った。
果たして一体どんなことをするのか、楽しみだ。
「魔の森は知っていますか」
「え? あ、はい」
魔の森、そこはとてつもなく魔物が多いところだ。
というか、俺の――狩場だ。
「そこにいる魔物を、狩ってもらいます。もちろん、一人で」
「……え?」
すると、エマが叫びだす。ものすごい形相だ。
「そんな!? あそこはとても危険です! 冒険者でもなかなか立ち寄らないはずです! 余りにも危険ではありませんか!?」
「知っています。だからこそですよ」
「でも!」
「エマさん、あなたがデルクス様をお慕いしているのは知っています。ですが、デルクス様はただ学園に入学したいだけじゃありません。彼は、誰にも負けないぐらいトップになりたいのです。わかりますか?」
「それは……知っています……」
「なので、口出しはしないように。私だって、危険なのは承知しているんですよ」
「わかりました……」
いや、ちょっと待ってくれ。
いつ口出ししたらいいかわからずに固まっていた。
どうしよう、なんていえばいいのか。
いや、素直にいうか。
俺はおそるおそる手をあげる。
「あの」
「どうしましたか、デルクス様。もしかしておじけづいたなんて――」
「あ、いえ、魔の森、よくいってます。いや、むしろ庭」
「二羽? どういう意味ですか?」
「庭です。庭。あの、実は言ってなかったんですが、訓練が終わった後、あそこで魔物を狩ってるんです」
「え?」
丁寧に言いすぎて敬語になってしまった。
リミット先生が驚く。当然、エマも驚く。
「誰とですか?」
「一人です」
「一人? 一人って、ソロですか?」
「はいソロです」
それから長い時間、リミットさんは静かだった。
その後、「ありえない……」とぼそりといった。
原作でも確かに恐ろしいと言われていたが……あれ、もしかして俺、やりすぎてたのかな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます