第17話 原作未公開、ドラゴン討伐

 【魔剣】

 Lv:30

 攻撃力:5000

 硬質力:4000

 属性:闇、光、火、風、水、土。

 固有能力:並列思考、魔力耐性、物理耐性、身体強化

 特殊スキル:足音無音、気配察知、瞬歩

 中銭稼ぎ(ごくまれにお金がもらえる)。討伐対象:ゴブリン

 硬質(一時的に防御を高める)。討伐対象:オーク。

 飛行(一時的に飛行する)。討伐対象:ハーピー。

 美声(イケメンボイスになる)。討伐対象:不明、スライム?。

 魔法糸(粘着性の糸を出す)。討伐対象:スパイダー。

 模倣(一時的に技を真似る)。討伐対象:ミラー。


 New:視覚強化、痛覚耐性。



「ダメだな。今日はここで野営しよう」

 

 恐れ谷へ向かっていたが、予想以上の魔物の群れに遭遇していた。

 倒しても倒しても前には進めない。


 崖の近くで安全場所を確保し、集めていた木を組んでいく。

 そして、ルビィが手のひらをかざして炎を飛ばした。

 

 小さな火が灯ると、そのままぶわっと広がっていく。


「便利だなその能力」

「ふふふ、いつでも芯から暖めますわ!」

「それは怖いな」

「デルクス様、すみません。携帯食しかなくて」

「いやむしろ流石エマだ。用意がいい」


 突然決まったことにもかかわらず、エマはポケットからカロリーメイトにしか見えないナニカを出してくれた。

 食べたことはないのでお礼をいいつつ一口。


 オレンジの酸味と爽やかな甘みが口に広がる。


「うまいなこれ」

「はい、臓物にしてはいいですよね」

「臓物?」

「はい」


 驚きで口からぽろぽろと少しだけこぼれるが、何の? とは聞かないでおこう。


「どうぞルビィさん」

「エマさんありがとう」


 その後も、エマは四次元ポケットかと思うぐらい色々と取り出していた。

 折り畳み椅子だったり、おやつだったり。

 まったく、優秀なメイドだ。


「それにして魔物が多すぎますわ。魔の森って、凄いですわね」

「いやそれは違うなルビィ」

「え? どういうことですの?」

「いくらなんでも多すぎるんだ。それに気づかなかったか? 魔物の種類がバラバラだっただろ」

「確かにデルクス様の言う通りですね。肉食と草食もいました」

「ああ、だが確信した。――ドラゴンは、この先にいる」


 魔物は弱肉強食だ。

 強いものが勝つ。ただシンプルにそれだけ。


 ドラゴンなんて現れたら一目散に逃げるだろう。

 それが俺たち前に現れているということだ。


「とはいえある意味では朗報だ。――時間もあまりないからな」


 空を見上げると、月が半分だった。

 明日の夜は満月になるはず。その日がそうだ。


 大勢が殺されるのを知りながら黙っておくのも夢見が悪い。


 それ以上に、俺の武器を進化させたいだけだけどな。


「さて、今日は寝ようか。魔剣を突き刺しておく。魔力が強い分、魔除けになるはずだ」

「はいですわ。デルクス様、私のおそばに。もちろん、エマさんも」

「は、はい」

「ま、今回はそうだな」


 そして俺たち3人は寄り添いながら目を瞑るのだった。


 ――――

 ――

 ―


 ――グオォオォオォオオン。


 とてつもなく大きな咆哮で目を覚ます。隣のルビィとエマも飛び起きた。

 すぐに周囲を見渡す。すると空――視界の遥か先にいたのは、ドラゴンだった。


「やっぱりか……。けど、どういうことだ? なんで……興奮してる?」


 遠目からでもわかるほど暴れ倒している。

 口から炎を吐いて、何かに怒っているかのようだ。


 幸い魔の森は魔法耐性に優れているので燃え盛ることはない。


 木ですら、弱肉強食で強くなっているのだ。


 そのとき、遥か奥に小さな村が見えた。


 ……原作で村が襲われるなんてなかったはずだ。


 おそらく大丈夫。だが――ありえないことはない。


「ルビィ、エマ、あれは危険すぎる。お前らは――」


 顔を確認してみると、二人は覚悟を決めていた。

 当たり前、か。


「近くまで跳ぶぞ。――俺にしっかり捕まってろよ」

「わかりましたわ」

「はい!」


 長距離は無理だが、幸い崖の上だ。

 浮遊しながら近づけばいい。


「ルビィ、もしドラゴンが俺たちに標的を変えてきたら盾を張れるか?」

「もちろんですわ。炎なら問題ありません」

「エマ、俺は飛行に集中する。魔の森の空には別の魔物もいるだろう。その時は頼んだぞ」

「わかりました」


 そして俺は、二人の肩を掴んだ。

 飛行といってもおんぶってわけじゃない。身体にさえ触れていれば、付与ができるのだ。

 魔剣は背中に装着している。


「さあ、ドラゴン退治だ。――どうせなら、楽しんでいこうぜ」


 そして俺は本心から笑みを浮かべなら崖から飛び降りた。


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