第4話 エマ(side)
私はデルクス様にお仕えする最後のメイドでした。
なぜそうなったのか。
デルクス様は、暴力的な言葉遣いを好んで使う方で、とても厳しい人だったからです。
そんな私もよく怒られていました。
ですがある日突然、デルクス様は
丁寧な言葉遣いで私を心配してくださり、なんとあろうことかお食事までご馳走していただきました。
それからというもの、財政難のビルス家を変えようと、家の整理、事業を整理したりと、みるみるうちに変わっていきました。
更には自らを変える為にリミット先生をお呼びして、毎日の訓練をはじめました。
今までと違うので戸惑いはありましたが、日々一生懸命に頑張っているデルクス様を見ていると、とても誇らしい気持ちになっていきました。
そして私は思い出しました。
『デルクスは強すぎたのだ。――何かあれば、私に連絡してくれ』
一度だけデルクス様のお父様が言っていた言葉を。
そんなる日、デルクス様は禁書とされていた書物から自らの出生届を見ていました。
悪いと知りながらも、私もそれを見てしまいました。
そこには、とんでもない数値が書かれていました。
そして気づきました。あまりに巨大な力がゆえに、デルクス様は幼い頃に魔力を封印されていたのだと。
それが解放されたのでしょう。性格まで変わったしまうのは驚きましたが、あの王都でも凄腕で有名なリミットさんが、いつもデルクス様を褒めるのです。
「デルクス様は、おそらく世界を変えるお方になりますよ」
決して人を褒めないと噂のリミットさんが、まっすぐな目でそれを言っていました。
私は驚いて、そして、嬉しくなりました。
私が屋敷を逃げ出さなかったのは、実はデルクス様の弱さを知っていたからです。
私は、デルクス様が過去に何度か剣を振っているのを見たことがあります。
魔法を練習していたのを見たことがります。
ですが、それはうまくいきませんでした。
それからも何度かありましたが、いつもその後は自暴自棄になり、他人に強く当たってしまう。
それが、デルクス様でした。
でも実は才能がなかったのではなく、封印のせいだったのです。
私の生まれは山奥でした。
そこでは
それが――私でした。
といっても、私には理解ができません。
迫害され、阻害され、仕方なく力を使って生き延びていました。
しかしそんなことが永遠に続くわけでもなく、行く当てのなくなった私をメイドとして雇ってくれたのが、幼いデルクス様でした。
「君、強くて可愛いね。僕の家で働かない?」
まだ幼い頃のデルクス様は、とても純粋でした。
私はとても嬉しかったのです。ただの気まぐれでも、居場所をくれたことが。
だからこそ私はずっと家を支ええてきました。どれだけの人が離れても、暴力的になっても、デルクス様を守ろうと。
そんなデルクス様は、さらに立派な人に変わりつつあります。
今まではただ眺めているだけでしたが、それはもう終わり。
これからはデルクス様と共に、お屋敷を立て直し、そして願いを叶えてあげたい。
その為なら、私は、なんだってする覚悟があります。
デルクス様、私の命に代えても、あなたをお守ります。
あなたのことを、誰よりも大切に思っています。
これからも一緒に頑張りましょうね。
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