第11話 全員叩き潰す。

 ソードマジック学園。

 原作の名前を少しもじっただけだが、この学園自体はとても崇高なものだ。


 貴族学校だということもあって才能ある奴らがこぞって集まる。

 傲慢な奴も多いが、それは自信がプライドを支えているからだ。


 原作主人公もいるだろう。


 会うのは初めてだが、楽しみでもある。


 俺の力がどれだけ通用するのか、一番わかりやすいからだ。


 原作の俺はかませ犬としてボコボコにやられる。


 まあ、元が雑魚悪役モブなので仕方ないだろう。


 つまりここで勝つことができれば、俺は自身が強くなったと胸を張って言えるということだ。


    ◇


「……終わったかもしれねえ」

「大丈夫です。これからですわ!」

「はい、そうですよデルクス様!」


 それから数時間後、俺は項垂れていた。


 まさか一発目が座学だとは思わなかった。


 もちろん勉強もしていたが、訳の分からないことばかり書いていた。

 西の地方の100年前の民族の話だとか、東の国の戦争は誰が仕掛けたとか。


 原作にまったく描かれていない話ばかりだ。


 ――そりゃ無理だろ……。


 だが俺はトップを取ると決めた。


 実践テストで最高得点を取り続けなきゃいけない。


 後はもうない。

 

 ――絶対にやってやる。


「デルクス様、お飲み物です」

「ありがとう、ルビィ」


 すると、ルビィがニコリと笑って飲み物を差し出してくれた。

 エマはハンカチで俺の汗を拭いてくれている。


 ここまでしてもらっているのだ。期待に応えたい。


「なあ、あそこにいるのデルクスじゃないか?」

「あのデルクス? いつもピーチクうるさいやつだろ?」

「隣にいるの、炎のルビィじゃないか? なんであいつと……」


 少し離れた場所で、俺のことを話しているやつらがいた。

 小物とはいえ、デルクスは悪党だ。


 知っている奴も当然いるだろう。


「ふう、ありがとう。飲み物――」


 気づけばルビィとエマがいなかった。

 視線をさっきの奴らに向けると、二人に何か言われているみたいだ。


 その後、肩をすくめて離れていく。


 一体何を……?


 戻って来た二人は、とても笑顔だった。


「な、何を言ったんだ?」

「少しお伝えしただけですよ。陰口は良くないですよ、と。ねえエマさん」

「はい! とても丁寧に伝えただけです!」


 聞くのが怖いほどの笑顔だ。

 というか、あいつら原作でもかなり傲慢な奴らだった気がする。


 それを秒で黙らせるとは、恐ろしい……。


 そのとき、アナウンスが流れる。


【次は、合同で模擬テストです。集まってください】


 このゲームは創作物だが、魔物がいるファンタジー世界だ。

 当然座学よりも戦闘試験のほうがポイントが高い。


 文武両道もいるだろうが、そんなのは稀だ。

 誰もが強さに憧れ、力を欲している。


 これは総当たり戦だったはず。


 普通なら勝って負けてを繰り返すが、俺は全員に勝つ。


 それだけ鍛えてきたのだ。


 そのとき、俺の前を颯爽と通り過ぎる女性がいた。


 綺麗な金髪美少女、特徴的な大きな目が綺麗だ。

 スタイルも良く、長い剣を持っている。


 ――彼女の名前はオリヴィア・フェルト。


 最強の王宮剣士、そして――原作主人公でもある。


 あいつを叩き潰せば、俺が間違いなく一位だろう。


「ルビィ、エマ、見ていてくれ。――俺が勝つところを」

「何も心配しておりませんわ!」

「私もです!」


 二人の忠誠心にはほとんと頭が上がらない。

 だが、それを実際に見せてあげたい。


 ――さあ、本番開始だ。



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