第22話 七不思議のない学校 酉

本格的に夏休みに入り、部活や当番でしか学校に行かなくなった。


当番の日。学校に行くと、「宿題多くね」と赤間が声を掛けてきた。久しぶりに会って最初の言葉がこれかと思った。「久しぶりー」と雨宮も来た。三人で教室に向かうと先に居た関田が「やぁ」と言う。今日は久しぶりにみんな揃ったようだ。


畑の除草は三千里をスローガンに先生と僕らは草むしりを始める。


「ここも七不思議になんねーかな?」そう赤間が言う。「そう言うと思って」と雨宮がポケットから何かを取り出す。


水?濁っている?そう僕が考えていると、「これは牛乳を濾過して腐らせたもの」と言った。雨宮曰く、霊や魑魅魍魎が好きな物のひとつに水があり、牛乳があり、また、妖怪は綺麗より汚いものを好む。だから、全部を掛け合わせ撒けばなんかの怪異が取り付くと考えた。雨宮の姉は強いやつが来ても最悪橘さんが居るから、との事。


草むしりが終わり当番も終わった時にあの液体を撒き、お米をまく、そして適当なお経を唱える。雨宮曰く適当なお経も霊を引き寄せるらしい。


一学期にみんなでふざけてやった事があるが100%霊がよってくる。


タダで食べれるレストランがあったら皆行くように魑魅魍魎たちも寄ってくるわけだ。


そんなこんなで今日は終わった。


次の日また当番だった僕らは、畑に着いた時ゾッとした。


昨日と同じだからだ。普通というか必ず「なんかここの空気気持ち悪い」となるはずだ。だが、何もなっていない。特に赤間と雨宮がビビっていて関田も少し動揺していた。


僕は霊感がないし、関田は霊を信じていない。でも、皆が嫌な予感というものや嫌な空気というのは分かる。


関田も前に同じ儀式をやった時は「確かに昨日より空気が重い」とテンションが上がっていた。


だからこそ僕らは震えた。


雨宮はこの儀式ができない理由が2つある。ひとつは神社などの聖なる場所もうひとつは結界があり、霊が入れない場合。でも、ここは神社などの聖なる場所ではないから結界があるんだと思う」


そう言われてハッとする。


何かが結界の役割をしている。前に図書館で調べたが街の作り、形、構造が結界になっている訳では無い。


何かが結界の役割をしているんだと考えた。


そして雨宮の姉などは結界が見えなかったことから、結界の役割は怨霊にしか効かないと考察できた。


もし結界が何か判明すれば結界に穴を開けて悪霊を呼び込むことが出来る。


雨宮曰く、1日結界があるか、ないかで変わるらしい。


そんな話をしていたが、関田は信じていないようだった。


ふと赤間が言う「そういや俺さ、結界の話を最近ネットで聞いたんだよね」


出入り


ちょうど8月にみんなで近くの山に行った。みんなと言っても僕とAとBの3人だけだ。


最初はBの提案だった。みんなでAの22歳の誕生日祝いにお酒を飲みあった僕たちは酔っ払った頭でなんか記念になることしたいと考えた。


そして怖いはずの山の廃墟に行く事にした。ここまでが廃墟に行く事になった理由だ。


Aの車で行って着く頃には僕たちは酔いも覚め、冷めた空気になっていた。


そんな車内の静けさに終止符を打つようにガチャとドアが開き「あははあははぁぁあああ」とAが山奥に行ってしまった。正直Aはそういうことをする奴だったので僕はキレそうになった。


暗い山に吸い込まれるように僕とBはAを探しに行くことにした。「おーいA」と声をかけるが聞こえる音は虫の声と僕らの荒い息、そして落ち葉や落ち枝などをふむ音だけだった。


誕生日だからってふざけすぎだろと思いつつも山を登る。やがて、廃墟が見えてきた。


「わぁ」とAが木の影から出てきた時はBと一緒にAをぶん殴った。Aは鼻血を出していたがそんなのどうでもよかった。ふと気づくと虫の声、風の音、とにかく無音だった。


Bは狂乱状態になり廃墟に落ちている石を投げつけ、枝で廃墟を叩く始末。


とにかくBを止めようと近寄る。「ことり」と石が転がってきた。


変なところから汗が出てくる。Aが「どうしたんだよ」と蚊のなくような声で言う。


3方向から視線を感じる。汗が目に入り目が痛くなる。


ふと転がってきた石を見る。あぁ神様助けてくださいと心の中で言った。いやきっと声に出ていた。


バタンとBが倒れる。僕とAは目を合わせると同時にBを担ぎ車に乗り込む。


Aが「あの石なんだったんだよ」そう僕に聞くと同時に僕は「ありゃ石って言うか地蔵の頭だった。」と言った。


夏というのに悪寒を感じる。


近くのコンビニに着く頃にはBが目を覚ました。


B「入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた入れた」


っていう話なんだけどこれも立派な結界の話で、結界となってたお地蔵さんが壊されたからBに入れたという話だ。


そう自慢げに話す赤間を横に先生が「口じゃなくて手動かせ」と言っていたからか、話が面白かったのか、関田が吹き出していた。


来週はこの高校の近くで祭りが開催されるらしい。楽しみだ。

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