第25話 七不思議のない学校 鼬

結局文化祭はなくなってしまい、風が冷たい時期になってきた。


まだ、七不思議は好評のようでみんなそんな話をしている。


僕らは仲のいい先生が自殺をしてしまったと言う悲しさと、もし僕らが七不思議を調べたりしなかったらと言う罪悪感が深く残った。


そうこうしてるうちに僕らの街の木々は末枯れた。


いつものように朝起きると、いつも通りとは違う世界だと僕は直感で気づいた。


学校でみんなに聞くと皆「今日いつもとなんか違うよね」と言う。


だからなんだと言われたらそこで終わりだが、何かがいつもと違っていた。


1時間目からニワトリの世話をしないといけない。


隣の女子が炎酉が出たら怖いーとか言っていたがそれよりも僕はニワトリに突かれないか心配だった。


鶏のゲージが6列あり、5人グループでひとつのレーンのニワトリの世話をする。


僕は1番左のニワトリの世話をする。


赤間、雨宮は1番右だ。


鶏の世話をしていると左から「あっちぃ」と大声で赤間が叫んだ。


先生が「どした」と駆け寄る。


周りがザワザワとしだす。


僕が赤間の方に目を向けるとそこには片手が燃えていた赤間がいた。


「きゃー炎酉だー」と叫ぶ人や呆然とする人がいた。


僕は気づくと赤間を押し倒し、燃えている所にニワトリの餌をかけて火を消した。


先生が消化器を持ってきてまだ燃えてる場所にかけた。


「ありがとう」と赤間が言っていたがそれよりも雨宮の「霊がいる感じが無かった」という言葉の方が心に残った。



今日は柳田が言っていた通り今日は普段と違う感じがする。


バタフライエフェクト


ほんの些細なことが後に大きな引き金を引く。


今日の1時間目はパソコンの授業だ。パソコンと言ってもWordの練習とかだろう。


私のクラスでも赤間の考えた七不思議とやらが流行っている。


隣の席の話を聞いているとやはり「自分の顔をコピーしてこいよー」とかなんだとか言っている。


1時間目は無事に終わった。コピーをして先生に提出する。先生に見せると「さすがやな」と言ってくれた。


休み時間


「ブーッガッガッガッ」とコピー機が動く。


「おいおいおい」と先生が言う。


4、5枚印刷された紙を見る。


「なんやこれ」と先生が驚く。


女子の悲鳴が聞こえてからは授業どころではなかった。


私も見たが、文字が擦れ確かに先生の顔に見えなくもない。だが、絶対先生とも言いきれないような模様だった。


自分の場所に戻りコピーをする。


「ブーッガッガッガッ」とまたコピー機が動く。


「きゃー」と誰かが悲鳴を言う。


印刷できた紙を見る。


やっぱり擦れている。


先生に説明をしようとした時「ガラガラ」と扉が開いた。


「西村先生窓から生徒が飛び降りてしまって意識はあるらしいんですけど」


私は僕らはそんなこんなですぐに家に返された。


2日後、僕の耳に入ってきた情報は衝撃を与えた。西村先生が事故を起こしてしまったらしい。関田から西村先生がコピー機で印刷されたっぽいなんて聞いていたから僕は溜め息を吐いた。


冬休みに入り僕らは色々と考えた。


七不思議をどうにかして無くそうとした。色々な罪悪感と後悔が僕らを覆う。


結構お正月もテンションが低いまま過ごした。


冬休みは誰とも遊ばなかった。いや、遊ぶ気にならなかった。


三学期に入り、このままだと…と考えていた矢先、また生徒が飛び降りたらしい。しかも20人以上だ。


2階からだったため皆死ぬことは無かったが、5人重傷14人軽傷1人意識不明の重体らしい。


それが起きた日の放課後明日先生に色々話そうと決めた。


次の日少しの緊張と共に起きる。立ちくらみで僕はベットから落ちた。倦怠感が僕を襲う。まぶたが僕の視界を遮る。頭が働かない。


結構、俺は緊張であまり寝れなかった。そのせいか今日は頭が痛い。そんな時も頭痛が痛いという言葉を思い出し笑う。我ながらバカだ。俺らのせいで副担が、多くの生徒が、いろいろな大人が大変な目に遭っている。つらい目に遭っている。なのに俺はこんな些細なことで笑ってしまう。あーもしも神様がいるなら俺らは地獄に落とされるだろう。いまだに自分の心配をしている。みんなの方がつらいだろうに俺は自分で精一杯な弱い人間だと確信した。


行かなきゃみんな待っていると言う使命感を阻むように体が重く俺はそこで倒れた。


柳田も赤間も関田も凄いと思う。正直僕一人なら言わなかっただろう。墓場まで持って行く。そう思いながらボーッとしている頭でリビングに行く。なんか体調が優れないなと思い熱を測る、40度あーこりゃだめだ。そう思いみんなに連絡をする。


自分自身でビックリした。僕らが始めたことじゃないか。なのに僕は知らんぷりして誰かに頼もうとしていた。このことをなかったことにしていた。臭い物に蓋をする僕を副担任は被害に遭った生徒は先生は友達は家族は許してくれるだろうか。正直怒られたくない。自分たちのせいじゃないと思いたい。「いっそのこと自分も死にたい。死んで被害者になってかわいそうだって思われてそれで僕も辛かったねって言ってもらいたいよ。だっていっぱい色々考えてたんだこの二か月間、いやもっと前からずっと、もうやんなっちゃったよ」気が付くと僕は口に出していた。目からは沸騰したかのように水がぼこぼこと湧き出ていた。


昨日から私は少しだけ体調が優れなかった。元々花粉症ではないが、花粉症なのか咳も朝から出るようになってしまった。熱もある。みんなに連絡しようとすると雨宮からも熱があると連絡があった。


自分の愚かさに愚痴を吐く「被害者にあった人はいまの自分よりもっと辛かっただろうというかいつもそうだこんな大事になったのは初めてだが、赤間といるといつもこうだ。もっと早くもっともっと私が頑張んなきゃだった。あーもうやんなっちゃった」

自分自身をあざ笑う。私も人間じゃないか。いやなことがあると誰かに押し付けようとして。でも、結局今の自分ではなく、過去の自分を責める。別に今も昔も変わってないのに。


僕は気づくと親がいた。どうやら風を引いたらしい。親が病院に連れていってくれるとの事だったので病院に行く。


僕は弱いです。人間の中でも弱い方です。楽しいことだけして後のことは知らないで生きていたいです。魔法が使えれば、時を戻したいです。生き返らせたいです。僕のせいでと思いたくないんです。寝て起きたら夢であって欲しいんです。謝って許してくれる世界にしたいです。みんなに会いたい。一人じゃ抱えきれないんです。もう僕一人じゃ頭がおかしくなりそうで、ずっと我慢していたんです。僕らが悪いのは分かってます。でも、もう疲れたんです。


車窓から定期的に通り過ぎる電柱を見ながら「ごめんなさい」と怒られた幼稚園児のように呟いていた。


順番待ちをしていると「赤間さーん」と聞こえ幻聴かと思いつつ見渡していると赤間がいた。赤間と目が合う。「赤間どうしたん?学校は?」赤間は「こっちのセリフだわなんで柳田がいるんだよ」と聞く。僕は「なんか風邪引いたっぽい」と笑った拍子に咳をした。


結構2人ともインフルエンザだった。そして雨宮も関田もインフルエンザだ。


仲良しか!と自分でツッコミを入れた。いやこんな状況なのにふざけんななんて思われるかもしれないですが、自分でもわかっていたんです。でもこれ以上気持ちが負に行くと僕は頭がおかしくなるって思って。いやずっと頭の隅で「お願い笑ってもっとお願いそうじゃないと」なんて警告が鳴り響いていたんです。これ以上はまずいって、もう考えないでって。誰に言い訳をするでもなく僕の頭で考えている言葉は敬語になっていた。


もしかすると平静を装いたかっただけかもしれない。僕はもう疲れたと目を閉じた。

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