第26話 七不思議のない学校 儿
結構1週間休んだ。
僕ら4人は手分けしてこの話を終わらせることにした。
校長に言って全校集会をする訳にも行かないからだ。
まず僕らは鶏舎の炎酉について話すことにした。
まぁ今回の火災は僕らが休んでいた時に専門の業者によって謎が明かされたため、みんな「なんだよーつまんねー」と言っていた。
「鶏舎には扇風機がある。その扇風機のコンセントに砂埃や羽などが積もり、火がつく。その火が赤間に移ったって訳だ。この現象をトラッキング現象と言う」なんて関田が推理していたがその通りだったらしい。
問題はパソコン室のコピー機と飛び降りの話だった。
死者は幸い出ていないが実際に怪我人は出ている。 パソコンはまだ先生の不注意と言えばいいが飛び降りはなんと言えばいいか僕には分からない。
まずはコピー機の話の誤解を解くのかと思ったが違った。
飛び降りを先に言うらしい。
飛び降りが起こったのは2年2組だった。クラスの半分以上が飛び降り、5~6人は学校に来ていない。
来ている人だけでもと、まずその先輩に鶏舎の話などをして、本題に入る。
関田が「先輩はハーメルンの笛吹き男という話を知ってますか」と問う。
先輩は「あぁ聞いたことあるぜ、昔友達が読んでたんだよ。なんて言うかドイツの話だろグリム童話の」と話す。
関田が続けて「えぇそれです。実話とも言われています」と説明する。
確か村でネズミが大量発生してそれを男が駆除したんだけど、村人たちがお金を払わないから男が、怒って村の子供たちを笛で呼んで、洞窟に入れて二度と戻ってこなかったみてーなやつだよなと先輩が言った。
関田が「その話っすね」と頷く。
初めて聞いたが、この話と飛び降りは関係あるのだろうか。
「踊りのペスト」そう赤間が言うと関田がにやりと笑う。
なんだそれと先輩や僕が聞く。
昔のヨーロッパでよく起こっていた。1人が突然踊り出す、すると周りも踊るようになり確か、ドイツからイタリアまで踊りが伝染した。その踊りを踊った多くの人がなくなった。踊りながら餓死した人や心臓発作で亡くなるまで踊り続けた人もいるそうだと説明する。関田は「なーんだ赤間って知ってるんだ」と嬉しげに言う。赤間は「あたりめーだ」といつも通り話す。
関田が「踊りのペストも、ハーメルンの笛吹き男も、誰か1人が引き金となり伝染する」という。
「集団ヒステリー」誰が言ったか分からないがその単語が聞こえた瞬間色々と繋がった。
関田が「実際日本でもコックリさんの後に何人かが急に過呼吸などで病院に搬送された事例があります」といい続けて、
今回の飛び降り事件は副担の幽霊がやったと言わないでください。もう楽にさせてあげて下さい。あの人はなんやかんや生徒が好きだったと思う。だって、学校は幽霊がいるって怯えながら毎日来ていた。辞めればいいのに。生徒が可愛いから、いい人生を送って欲しいからって、今回の飛び降りは自分が引き金って知ったらどうなるんだよ。報われないじゃんか。なんで飛び降りてしまったか分からないけど、亡くなってからは報われて欲しかったと言った。
関田は泣いていた。久しぶりに熱い関田を見てもらい泣きをした。
もらい泣きも集団ヒステリーの一種なのかと涙を堪えながら考える。
先輩も「そうだよなそうだよな」と励ます。
今日は関田がもう帰るとのことでパソコンのコピー機は月曜日に持ち越された。
あれから2日後学校に行く。
今日は少し肌寒い。花粉症の僕は目が少し痒く感じる。下を見るとオオイヌノフグリの花がチラホラと咲いている。
関田は前と打って変わって楽しそうに僕を見る。
放課後僕の教室に色々な人が来た。1年生のほかのクラス、2年生。パソコンの先生も、ほかの先生方も、僕はとうとうモテ期が来たらしい。やたらみんなと目が合いキャーと言われる。中には拍手をする人もいた。
関田がみんなに聞く。「皆さんこちらを見てください」そして、A4の紙を見せるとみんながキャーと言う。僕も続けて見る。僕の顔だ。僕の顔が印刷されている。
「これは3日前にあのコピー機で印刷したやつです」と関田が言う。
僕はそれを聞いた瞬間ふらりと倒れそうになる。
関田が笑う。「嘘だよ、これコンビニで印刷したやつ」僕はなんで倒れたんだろうと思う。
「本当は例のコピー機」「それはウソのウソのウソのウソのウソのウソのウソ」
もう僕は訳が分からない。
関田はみんなに言う。「プラシーボ効果って知ってますか?なんて言うか、思い込みです。この人は脳が無意識に死ぬと思い込み倒れた。だが、ウソと言われたことで脳が死なないやんと思い込む。そしてまた嘘と言われたり本当だよと言われ頭がパンクしてしまった」
「パソコンの先生がちょうど2日後に事故を起こしたのはほんの少しでも、死ぬと言う恐怖が引き金となり、いつもより緊張感を持って生活をした。いつもと違う道に行ったりしたんじゃないんですか?」続けて関田は言う。
西村先生が「あぁそうやな」と声を漏らす。
「バタフライエフェクトです。ほんの小さな変化が大きなことを起こす。実際少しの恐怖が事故を起こす引き金となる。」続けて言う。
「あと、印刷された先生の顔はこちらです。」
そう関田が言い紙を見せる。文字が擦れて顔のような模様になっている。だが、問題がある。全く似ていなかった。
そして関田は1枚写真を見せる。この人やん。
「これは私の友達のお父さんなんですが、こっちの方が似てますよね?そしてこの人は元気です。だから先生は思い込み。今回の七不思議の騒動は集団ヒステリーと思い込みそしてただの火事がちょうど、合わさっただけです。」
そう言って関田が締めくくる。それにしても酷い、後で文句を言ってやろうと僕は色々考える。
とある先生に「いや関田すごいな。関田助かったよ。最悪神主さんとか、あそこに住んでるあのー何でも屋の夜咲さんとか呼ぼうとしたんだけど。」と関田は言われていた。
そうして僕のファンたちはいなくなってしまった。
きっと七不思議はまた、この学校から無くなるだろう。この学校はお祭りが結界の役割をしてしまい。霊たちを閉じ込めてしまう。
そこに七不思議を組み込めば今回のように怪我人が出る。最悪死者も出るだろう。だから僕らは学校ではやらないようにした。
心霊スポットなら僕らにしか被害は出ないし、雨宮も、雨宮姉も橘さんが最悪どうにかするだろうとのこと。自分の獲物が取られたら嫌だかららしい。最もらしい理由だ。
実は僕らの裏で雨宮が除霊をしてくれていたらしく、今回の被害が思い込みと集団ヒステリー出収まったのは雨宮のおかげだった。もし、除霊しなかったら関田でも理解できないことが起きてこうしてみんなに説明ができなかっただろうと思う。
実際、関田も心理学や物理学でも説明できないことがあるとのこと。
今回のことは地域の新聞で飛び降りだけは載ってしまった。呪いか!と大きく書かれていたが、僕らは屋上を見て祈りを捧げる。
電車の中で色々言う。「関田って天国信じるんだ。」と僕が聞く。関田は「副担が言ってたからね。」と答える。皮肉のつもりだったが、また涙が出そうになったので本題へと移る。
「なんで僕がコピー機のやらされたんだよ。死んだらどうするん」と僕が聞く。「人間はいずれ死ぬ。だからそしたらドンマイだった。」そう真剣に関田が語る。
雨宮と赤間が吹き出す。
「あ〜あほら柳田が不貞腐れた。」赤間がいい、「ほらこれでも読んで元気だしな。」そう雨宮が言って、植物図鑑を貸してくれる。
関田の「ごめんごめん」を無視してページをめくる。
そこにはアカネの説明が書いてあった。僕と雨宮はニヤリと笑い関田に言う。
「アカネの花言葉がお似合いだ」と。
さくも月シリーズ 四季式部 @sikisikibu
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