第3話 僕が初めて関田と出会った時の話

赤間が入学してすぐに入院した。なので、僕は日曜日にお見舞いに行った。病院は僕の隣町にあり、自転車で30分くらいだ。


13時くらいに着いた僕はすぐに赤間の病室に行った。赤間の病室は最上階にある。着くと病院室の前に3人の名前が書いてあり、その中に赤間がいた。


窓際を見る彼はどこか退屈そうにしていた。僕が「や~久しぶり何年ぶりかな」と声をかけるとすぐに赤間は笑顔になった。


そうして赤間は入院してからのことなどを話してくれた。他にも、同室の糖尿病患者の山田さん、骨折して入院中の崎本さん、横のベッドに寝ている橘さんは赤間と気が合うことを教えてくれた。


僕は挨拶がてら、雨宮と体験したこと。その他にも学校についての話をした。他にもQ&Aをして、治ったら何をするかなど話していた。すると病室の扉が開く。


後ろを振り返るとそこには僕と同じ学校の制服を着ている子が立っていた。その子は僕に対して頭を下げると赤間の元に行き「よっ」とだけ言った。赤間はちょうどいい時に来たといい僕を紹介した。


僕はとりあえず「どうも」という。


赤間の友達は「もしかして柳田くん?」と会釈をした。とても高校生とは思えない姿勢の正しい彼は七三分けがとても似合っていた。


どうやら僕のことを知っているらしい。ハッとして「そうですけど」と返す。


「私は関田ですよろしく」とまるで翻訳アプリで翻訳したような口調で自己紹介をする。


僕はにこりと笑い「よろしくお願いします関田くん」と返すと、「呼び捨てでいいよ」と言ってくれた。彼の言霊は単調で僕は機械と会話をしているんじゃないかと思えた。


そんな会話をし、一通り話を交わした。彼は4組で、赤間とは小学生の頃から知り合いだとの事。


第一印象は頭良さそうなマッドサイエンティストのようだった。そして、ロボットのようでもあった。


3人で談笑していて、逢魔が時になってきた頃。僕達は帰ることにした。ベッドに座る赤間に別れを告げエレベーターに乗った。


僕はやっと関田の人間味を感じることが出来てきたなと思っていると「赤間の話でおかしな点はなかったか」なんて独り言のように言う。僕は「ビクッ」となって横を見る。眼鏡越しに見える目が僕を見ていた。


僕は特にないんじゃないかと言いったが、関田は病室の話で変なところがあったと言った。赤間が事故を起こしたときか、いや可愛い看護士がいたという話か、僕は頭をフル回転させて考えていたら気が付いた。


病室の札には3人しかいなかった。なのに、山田さん、崎本さん、橘さんが居た。そうなると赤間合わせて4人になる。僕は「じゃあ誰がいないのにいるの」と自分でも何を言っているかわからないことを関田に聞いた。関田はただ一言。橘さんはいないと言った。赤間が1番仲良いと言っていた橘さんだ。


僕らはナースステーションで橘という人物はいるのかと聞いたが、いないとの事だった。


関田は「くいっ」とメガネを直して言う。「赤間と何かしらの接点があって、亡くなってしまったショックからの逃れる心の現れだろうな。そう考えろよ。」僕はそこはかとなく腑に落ちなかった。


病院を出ると空は紫色になり、一番星が輝いていた。「じゃあ僕あっちだからばいばーい」と言い自転車にまたがった。


黄金色の空をバックに「そうなんだじゃあまた」という関田に手を振る。


橘さんは何者なのだろうか


そう考えながら足に力を入れペダルを漕ぐ。

「おい」と荒げた声が後ろから聞こえた。僕はふと前を見ると赤信号だった。急ブレーキをかけて白い車を見送る。


胸をなでおろし後ろを見ると関田がため息交じりに歩み寄ってきた。「考え事は家に帰ってからしろ。」と説教じみた口調で言う。続けて関田は「もう橘さんのことはさっきも話した通りだな」と言いかけたところで僕は「わかったから」と宥め帰路に就いた。


関田が「おい」と止めてくれなければ僕も入院していただろう。もしかしたら死んでいたかもしれない。赤間も自転車事故が原因で入院している。そう頭の片隅で考えていた。


後で赤間から聞いた話によると橘さんは自転車で下半身をやってしまったとのこと。


僕はそれ以来お見舞いに行っていない。金曜日に退院したというのもそうだが。橘さんに会いたくないからだ。


橘さん…橘…タチバナ


タチバナという植物の花言葉は追憶ということ。全て赤間の想像の話なのだろうか。


明日は関田に雨宮を紹介し、今日の話も。なんて思い階段を上っていると僕は転んでしまった。転ぶ刹那目じりの先端に男の人が笑っているのを見た気がした。

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