第4話 赤間退院誕生日会 起

昼休み、僕と雨宮で一緒にいると関田が近寄ってきた。「明日赤間が退院するんだ。あと今日、赤間の誕生日だから明日さ、退院祝いと誕生日会をやんないか」と言ってきた。


まさか関田から言ってくるとは思わなかった僕は「ポカーン」と口を開けていた。


雨宮が「誕生日は盛大に祝おうじゃないか会ったことないけど」と言い柏手を打つと同時に計画は始まった。僕はプレゼントを考える係になった。関田は家の装飾を担当した。雨宮はケーキに乗り気だった。


僕は赤間に曰く付きのものをあげようと思った。別に呪われろとかの理由ではなく、赤間は呪物、つまり曰く付きのものを集める趣味があった。


とりあえず僕は、曰く付きのものを探すことにした。


だからと言ってそこら辺のコンビニやスーパーに売ってるわけもなく僕は骨董品屋を探す事にした。


だが結局、骨董品屋は遠くにしかなかった。また、高いと思った僕はリサイクルショップに行く事にした。


海外の有名な話で人形をリサイクルショップで買ったら呪いの人形だったなんて例があるからだ。


とにかく僕は帰り道にあるリサイクルショップに行った。すると、すんなり人形を見つけた。夢の国の主役のぬいぐるみで前の持ち主が相当使い込んだのか、年季が入り、薄汚れていた。


僕はその人形と僕が欲しい服を会計まで持っていき、5000円札を出した。すると二千円が返ってきた。あの頃も二千円札はあまり見たことが無かったためラッキーだと思った。


人形はどうにかリュックにしまって今日は寝た。


朝起きて、また今日も同じ時間に家を出て、同じ時間の電車に乗る。同じ時間に駅に着いて同じ時間に学校に着く。いつもと変わらない日常だ。


だが、学校に着くといつもと違うことがあった。


今日は赤間が学校にいた。足は包帯ぐるぐる巻きで松葉杖をついていた。僕を見るとすぐに目を輝かせた。


そんなに会いたかったんだなと心の中で思い、1度しかお見舞いに行けずにすまんと思った。しかし、赤間は久しぶりに会ったから目を輝かせたのでは無かった。


赤間は久しぶりも言わずに「お前呪われたん?」と言ってきた。そういえば赤間は少し霊感があるんだったなと思い出すと同時に僕は挨拶代わりに返答する。


「普通呪われて嬉しいなんてやついないから」


僕がプレゼントに買った人形は本物だったのだと喜ぶと同時にバレたのではないかと言う焦りの気持ちもあった。


その傍ら俺も呪われてーと言っていた赤間に「橘さんに呪われてるやん」と心で突っ込んだ。朝のホームルームが始まっても教室にいなかった雨宮は遅刻らしい。


お昼ご飯を赤間と関田と3人で食べていると雨宮が来た。話によると雨宮の姉が急に倒れてしまったので看病をしていたという事だった。姉が急に倒れたのは九州にいた以来だったらしくものすごく驚いていたと言っていた。


だが僕を見ると雨宮はどんどん顔が青くなり、震えだした。これを顔面蒼白と言うんだなと何故か感心していた僕は、ふとあの人形が思い浮かんだ。兎にも角にも雨宮を連れていき事情を説明した。


だがやはり、すぐに手放した方がいいと言われてしまった僕は関田と説得した。


雨宮は「プレゼントだとしてもこれはやばい。コトリバコとオイビトケズリを合わせたような奴だからだめだろ」と怒るが、続けて関田が「呪いは信じれば死ねるし、信じなければ何も起きない。あの丑の刻参りで呪われた人がいて、その人が死んだら警察はどうすると思う。丑の刻参りで呪うぞなんて脅したら脅迫罪になるが、丑の刻参りの呪いで死にました。なんて裁判があったらおかしいだろ」と反論する。


2人とも結構熱くなっていたが、結局何かあったら直ぐにお焚き上げをすると言うことでとりあえずは交渉成立した。


放課後、僕らは関田の家で赤間退院誕生日会を開催した。関田の親は共働きらしく、いつも一人でいるらしい。


リビングテーブルの周りにみんなで座った。僕の前に主催者、左斜めに神社生まれ、そして左に本日の主役が座っていた。


ケーキは勿論ショートケーキだ。みんなで700円ずつ出し合い買った。


6本のロウソクと大きい1本のロウソクを立てかけ火をつけた。そして電気を消した。「はっぴばーすでーとぅーゆーはっぴばーすでーとぅーゆーはっぴばーすでーでぃあ〇〇(赤間の名前)はっぴばーすでーとぅーゆーおめでとー」手を叩きながらみんなで歌う。


気づくと僕の右からも手を叩く音が聞こえてきた。最初は自分の拍手が跳ね返って聞こえると思っていたが、どうやら違うらしい。


いつの間にか両隣や自分から手を叩く音が「パーン」から「パン」と響かなくなったなと思い始めた時、ロウソクが「ふっ」と消えた。


真っ暗だ。あの人形を思い出し少し恐怖心が出てきて僕はいつもより大きく手を「パン」と叩いた。体感時間は1~2分だったが、きっとすぐだろう電気がパチリと点いた。すぐに明るくなった部屋でまだ慣れない目をパチパチさせていた。


ふと右を見たが誰もいない。当たり前だが当たり前とは言えなかった。このテーブルは4人掛けだ。だから両方から手を叩く音は聞こえるはずは無い。響いていたのかと思ったが、手を叩く音が「パン」すなわち響いていないということだ。


じゃあ隣に誰かいた?


僕はふと右下を見るとプレゼントの入ったバッグがおどろおどろしく僕の裸眼に写った。

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