第16話 七不思議のない学校 卯

最近の話題はとある漫画の話と学校の七不思議、学校の怪談だった。


その日は夏のはじまりと言うのに日差しが暑く今夜は熱帯夜になるだろうとの事だった。


僕らは部活中に先輩に学校の七不思議を聞いたが、この学校はないらしい。


確かに僕らが通っている高校は普通科ではなく農業高校で畑やら温室やら培養室、畜舎など普通科の学校にはない施設がある。


だからこそ赤間は普通科ではない農業高校の七不思議が知りたいとのこと。


部活も終わりまだ逢魔が時だった空の下。僕らは皆で帰っていた。


僕は聞く。「普通科と違うから七不思議も違うんかな?」間髪入れずに赤間が「そこなんだよね」と言うので、続けて僕は「例えばトイレの花子さんじゃなくてトイレの滝野川さんとか?」とあくびをした。


「ゴボウの品種じゃねーか」と雨宮がツッコミを入れる。赤間も透かさず、「オカルト舐めとんのか」とツッコむ。僕は「言いすぎやろ」と笑った。


そんな会話をしていると隣にいる関田が飲んでいたお茶を吹いた。


すると「あっゴボウと言えば」と雨宮が言った。


ごぼう様


僕と僕の隣にいる姉が体験した話だ。


僕が昔住んでいた街には大きなお寺があった。そのお寺の住職さんと僕たちは仲が良かった。


そんなある日突然、住職さんが失踪した。


僕のおとんに話を聞いたらおばけの金太という置物が呪われていると、とある老夫婦が来たがおとんは自分ではどうにも出来ないと思い、お祓い関係が得意な住職さんに電話をしたとの事。


そして老夫婦を住職さんに引渡したそう。


住職さんは余裕だよと言ってくれたらしくその日はおとんが住職さんのことを褒め称えていた。


その事を伝えに行った。まぁお菓子目当てというのもあるが。


お寺について戸を叩く。はいと返事をしてとーくん(イケメンなお弟子さん)が出てきた。とーくんは僕と姉を見ると、「おー雨宮ちゃんと雨宮くん久しぶりやなぁ」と言ってくれた。


姉は「どうも、あの住職さんいますか?」と聞く。とーくんが「あー住職は昨日出かくるって言うてから帰ってこんのよもうそろ帰ってくるて思うけん上がって待っとってくれる?」と僕らに言う。


姉は「そうなんですね○○(僕の下の名前)待ってよう」と言うので、僕は「うん」と承諾した。


僕と姉で「お邪魔します」と言い、中に入る。そして待っていた。


それにしても何故あの住職さんは彼女が居ないのか子供ながらに分からなかった。


少し待っているとスーちゃん(ぽっちゃりのお弟子さん)がお茶とお菓子を出してくれた。


僕がスーちゃんを呼ぶと僕の遊びに付き合ってくれたからかスーちゃんが1番好きだった。なんと言うか良いキャラなのだ。


しかもスーちゃんは造園師の資格を持っていて植物に詳しかった。そこから僕の植物好きが始まったんだと思う。


姉は年頃の女の子は皆イケメンが好きというのにも関わらず、ハゲの住職さんが1番好きでよく一緒にいた。まぁアレが見える同士だからというのもあったと思う。


僕はスーちゃんと一緒に庭の植物を見ていた。


車の音がして振り返ると住職さんが帰ってきていた。戸が開き姉も出てきて駆け寄った。住職さんは顔色が悪く、姉に「今日は休みたかごめんね」と言った。僕はスーちゃんと居たいと、姉はお寺の雰囲気を味わいたいと言い帰らずにいた。


日が傾き半袖で居ると肌寒いかなくらいの時間になった。


姉が「そろそろ帰るか」と言ったので僕らは帰ることにした。横に寝ていた体を起こした時、「コロン」と僕のポケットからおばけの金太が落ちた。


隣にいた姉と、スーちゃん、とーくんは顔面蒼白になっていた。


住職さんがちょうど部屋に入ってきて僕らと目が合う。優しい顔は般若と化して、姉はとーくんに連れられて帰路に帰った。


準備が終わりスーちゃん、住職さん、僕の3人で御本尊を囲んでいた。戸が開きおとんとおかん、そしてとーくんがいた。


住職さんは違う宗教同士でお祓いをすることによって上と下から封印するように出来るという。


ひとつのお祓いだと1方向からしか祓えないため色々な宗派でやるのが住職流らしい。まぁいつもは1人でも十分に祓えるがダメだったのでこの判断に至ったとのことだ。


難なくお祓いは終わりを告げた。


後で聞いた話だが、住職さんは1日かけて遠い山に捨てに行った。しかし、僕のポケットから出てきて焦った。


住職さんに渡されたおばけの金太は他と違っていた。まず、老夫婦は祖父の蔵から出てきたのを家で飾っていた。ある日を境に気づくと倒れることが多くなった。


そして最近、家が火事になった。出火元は人形を置いていたところ。だが、人形だけは燃えずに居たという。


そのおばけの金太の顔に塗ってあったのは赤子の血だった。そして柄の部分はゴボウのようになっていた。


とある古伝では、ゴボウは魑魅との結びになる植物とある。また、ゴボウはよく魍魎が好むものらしく神が嫌う植物でもある。そして、「江戸野菜奇譚伝」や「倭国怪奇画」にも載っている。


1782年4月5日今の三重県で牛蒡炎という妖怪が約5分町を燃やしながら歩いたとされる。死者数は500人を超え、負傷者は1500人を超えるという被害を出した。同年5月16日には今の鳥取県で泣き牛蒡という怪異が農村を襲い、約2時間泣き喚いた。この声は京都にも聞こえたとの記録が残っている。死者数は300を超え、鼓膜が破れて耳が聞こえなくなってしまった人は14000人を超えると言われている。


また、同年に起きた天明の大飢饉は牛蒡の神を怒らせたことによるものだと考えている学者もいる。


「ゴボウとオカルト、結べないようで結べてしまう話」


そう雨宮が言ったので、トイレットペーパーやミルクレープもオカルトになるんかな?と考えていた。


全然違うようで繋がりがある物。牛蒡、牛、牛の首、流石にやりすぎか、


そう思って空を見る。紫がかった空がまるでゴボウの花色に見えて微笑む。


「チャリンチャリン」と自転車のベルが鳴った。僕は空を見ながら歩いていて自転車が来たのに気づかなかったらしい。


僕は「すいません」と言い、退く。


大丈夫かとみんなが言ってきた。


気をつける…用心


何故かごぼうが好きになった。


ふと、視界に赤い服の女の人が見えた。アレがごぼう様と思ったと同時に消えた。


いや違う殺られたんだ。橘さんに。


私に触れないで、用心、このふたつがゴボウの花言葉だから何故か合点がいった。


今日はきんぴらごぼうを食べたいなと初めて思った日だった。

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