第12話 ホラーゲーム

「ゲームは好きか?」そう赤間が聞き、続けて俺の家に来てほしいと電話を切った。僕はまぁまぁ好きだ。スマホゲームはあまりやらないものの、テレビゲームなどは良くやっていた。


卯の花腐しが終わりを告げた頃で、まだ五月雨の面影が道端に顔を出していた。


少し住宅街で迷っているとお目当ての表札を見つけた。


ピーンポーンと、チャイムを鳴らして待っていると雨宮が来た。「庭がすごいね。この木ユーカリでしょ。あの木はアカシアだ」そういう彼は目を輝かせていた。確かに庭は小さいながらに手入れされていて美しかった。


お互いに挨拶をしていると赤間がきた。「おー2人で来たんか。どうぞ入って」僕たちはちょうど同じくらいに着いただけと説明し、家に入る。



「おじゃましまーす」と僕たちが唱えて足を踏み入れ僕はびっくりする。玄関が驚くほど綺麗だ。


こう言ってはなんだが、赤間は学校の机の中とかがちょっと汚い。だからと、僕はステレオタイプの思考を向けていた。家は綺麗だった。


すぐ左にある階段を上がり突き当たりの部屋に通された。


ドアを開けると同時に絶句した。雨宮はだろうなという感じだった。きっと着いた時くらいから感じていたのだろう。


赤間の部屋は色々な、様々な、そして多様な仮面や人形、写真や楽器、中には電子レンジも飾ってあった。


その光景はまるで呪いの博物館の様だった。


その中に一際大きい人形がいた。


違うあれは関田だった。相変わらず姿勢がいいなと思い、目を合わせると「よう」といつもの返事をする。


そして一通り僕たちに部屋の説明をしてテレビをつけた。ゲームをやるらしい。二人でやるゲームらしく僕たちはじゃんけんをする。「最初はグーじゃんけん」ポンの掛け声とともに「やったー」と赤間と雨宮が言う。


正直僕はテレビゲームをしない派なので見る方に回って安心した。マリ〇ブラザーズは大好きだが。


「どんなホラゲーなんだ?」と関田が問う。僕は普通に青い鬼から逃げる奴とか、怖い森の奴とか思ったが違かった。


赤間曰く、僕らが産まれる前に作られた海外のゲームらしい。キャラや話の流れが怖く、知る人ぞ知るゲームとのことだった。そして、このカセットは1家殺人事件の家でやっていたものとのこと。


また、このゲームはゾンビを倒すという内容だがそのゾンビがプレイする事に増えていくそうだ。ランクが上がりゾンビが強くなったり、多くなったりするという増え方じゃなく、初期設定に戻すと増えるらしい。


関田は「ベランダ出てていいか」とだけ言いベランダに出て行ってしまった。関田は画面酔いしやすく。前にマ〇オをやって酔ってしまい、2時間くらい動けずに横になっていた。


関田にもそういう一面がいるんだなと何故か僕は感心していた。


テレビを見ているとゲームが始まった。画面にはstartと書いているボタンとexplanationと書いているボタンが表示されていた。とりあえずスタートボタンを押す。操作方法は赤間が知っているそうで、雨宮に教えていた。


暗い部屋に主人公の男性がいる。「〇〇□△□□△」英語が表示されすぐに消えた。読めない、僕は正直、英語は得意じゃない。そして雨宮も赤間も分からない。なんて書いてあるのか分からないまま物語は進む。本当は関田がいればいいのだが、そう思いながらテレビを見る。


「ha- ha- tired」明かりを灯す主人公の口から白い息が出ている。きっと寒い設定なのだろう。また、文字が出る。「□△△winter〇〇△□〇」唯一読めたのはwinterだけだった。たぶん冬の小屋に居ます的ななんかだろう。それにしても文字が消えるのが早い。


雨宮と赤間は「何て書いてんのかわかんねー」と愚痴を漏らしていた。僕も「日本語の字幕とか欲しいな」なんて相槌を打つ。


英語が読めたらもっと楽しめただろうか。


そんなことを考えながら画面を見ていた。ゾンビのような生き物がうじゃうじゃ出てきた。2人は倒している。また英語が出た。kill zombiesとだけ読めてゾンビを倒せってことかと頭で考える。


雨宮が死んだ。「まじかー」と言い僕の方を見る。1分もしないで赤間も死ぬ。game overと画面に表示される。


するとcontinueではなく長い英文が星戦争映画のように流れてくる。


最初のYour pley game is だけ読んで心が折れた。何でこんなに消えるのが早いのか、


ちょっとうざがっているとbehind youと画面いっぱいに表示された。なんて書いてあると雨宮が聞く。「あなたの後ろ」と赤間と僕は言う。


画面に僕たちが映し出されている。いや画面が暗くなり僕らのいる所が反射している。


僕らの背後をよく見ると人影がある。関田かと振り向こうとして驚く。画面にベランダが映っていて空を見ている関田を写していた。じゃあ後ろにいるのは誰なんだ。気づくと体が動かなかった。金縛りだ。


声も出せない。目を閉じることもできない。ただ心臓を打つ音が僕を揺らしていた。どうすればいいのか?


バタンと雨宮が倒れた。その瞬間僕は金縛りが治った。「後ろむくな」雨宮が叫ぶ。「画面だけ見てろ」そういうと祝詞を唱える。聞いたことがないようなやつだ。


クランクデビルのような生き物が悲鳴を上げ、頭を抱える。僕らに近づくにつれ体が消えていく。僕の肩を触ろうとした形で完全に消えた。


「ガラガラ」窓が開いた。楽しかったかと関田が来る。僕らは苦笑いするしかなかった。


「もしも僕たちが英語完璧だったらやばかったよ」と雨宮は苦笑いする。続けて「あの文字列は呪文だ。読んだだけでも呪われるんだよ。でも僕らは英語が分からなかった。一番読めていた柳田を連れてこうとしてたけど、少ししか読めてなかったから呪力が弱かったんだろうな」そう言い額の汗を拭った。僕だってそんな読んでない。ほんの少しの読みで、雨宮と五分五分だった。


笑いながら「馬鹿でよかったって思えることもあるんだな関田だったら死んでたぜ」という赤間の額にも汗が浮かんでいた。


あそこで僕らが後ろを向いたら、掴まれていたら、きっと新たな主人公にゾンビとして倒されていただろうと思った。


敵も元々はいい奴だったと思う。僕はマリ〇ブラザーズはボス以外の敵を倒さずにクリアしたいと思った。


コントローラーを両手で握る。今日は徹夜決定だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る