第8話 マンションの怪異 前

あの日から雨宮と遊ぶことが無くなった。


学校で話すくらいってやつだ。僕たちはオカルトも禁止にした。


だが、それは長くは続かないものだ。僕たちはゲーセンやカラオケなどは行かない。ゲーセンは前にみんなで行ったが、一日ずっととかではなく、何があるかなくらいだ。


特に赤間はオカルトや民俗学しか興味がなく、アニメやマンガの話も出来なかった。まぁしなくてもめっちゃ面白いし楽しい奴だが。


簡単に言うと僕たちはゲーセンやカラオケなどではなく森や山、廃屋や事故物件などが好きだ。


そんな僕たちにオカルト禁止例をしても気づいたら…なんてことがあるわけだ。例えて言うなら、いつもの楽しい公園に来たのに遊具の使用禁止を下された小学生だ。遊ぶ場所があるのにダメと言われても我慢はそう長く続かない。生理現象さながら眠くなったら目を瞑るように。


いつもしていたからふとした拍子にオカルトという暗闇が目を覆う。誘惑には勝てない。興味心が僕らを作る。頭よりも先に体が動く。きっと関田もこういうだろう。


こどもの日に遊ぶことにした僕たちは、イタリアンチェーン店でご飯を食べる事にした。そこで気づくとオカルト話になった。


僕らは某サイトで炎が写っているところを探し、タップした。そこは学校の近くのマンションだった。そこで火事が起こり、逃げ遅れた家族と何人かの人が亡くなった。


マンションと言っても今は誰も住んでいなく、廃墟になっていた。


そこで火事が起こったらしく、死者多数とのことだった。


すると赤間はパスタを巻きながら言った。「あのマンション僕たちが産まれるくらいに火事が起きたんですよ、じゃあなんで、今になっても取り壊さないのか不思議じゃないですか?」何やら大御所の怪談師のように話すとパクリとパスタを食べた。


続けて赤間は言う「あのマンションは色々とおかしい点があるんですよ。まず、いつからあったのかが分かっていないんすよ。なんと明記がバラバラなんですね」


「例えば図書館で10年前の地図を見たとするじゃあないですかー。すると、ちゃんとマンションが載っているですねー。でも、6年前には載っていない。15年前は載っているんだけど、20年前にはまた載ってなかった。そう周期ごとにあったり無かったりするんだよ」他にも火事の事件が放火なのかな事故なのか出火元がどこなのかも分からないとも言った。


そんな話を一通りして、僕たちは陽が水平線を越すと同時にマンションに向かった。自転車に跨りいつものようにじゃんけんで先頭を決める。


「じゃんけんぽん」そうして僕は先陣を切った。自分で言うのもなんだが僕たちはあまり罪を犯したくは無い。並行運転をしないよう一番後ろに関田。真ん中に赤間。そして僕が先頭になりマンションに向かう。風が強く寒い日だったこともあり、僕は厚着を着て行った。


行く途中に赤間は、そこに行くと女の人が立っている。赤子の声が聞こえる。などの定番ネタを言っていた。また、マンションに入ると体が熱くなると言っていた。普通心霊スポットに行くと体がひんやりと寒くなるはずだ。


僕は面白い心霊スポットだとちょっと思った。


他にも333号室で一番怪奇現象が起きるなんて言っていた。


マンションに着く頃には辺りは暗くなっていた。


遠くに見えたマンションは全体が蔦に覆われていて、少し見えている外壁には落書きがあった。


これが僕の人生初の事故物件だった。だからこそかは分からないが、建物が少し蠢いているようだった。その神妙な外壁の面持ちはものすごく不気味にそしてほんの少しだけ神秘的かつ感情的に見て取れた。


僕たちは近くの砂利道に自転車を停めて眺めていた。立ち入り禁止の看板もあったが全て年季が入り文字が薄れかけていた。


マンションの近くまで行き、顔を見上げるとマンションと言うよりは小さいホテルのように見えた。そしてもともとは6階まであり、ここら辺ではいいマンションだったらしいが今はもう3階までしかなかった。取り壊そうとした痕跡だ。


3階までのその風貌は僕たちを歓迎するように蔦と人それぞれの考えるアートを着飾る怪物のようだった。


窓ガラスは全て割れていた。人の手で割られたのか霊が割ったのか、そんな事を考えていると赤間が中に入ろうと言ってきた。僕はすぐに承諾した。


関田は外で待っているとのことだった。


理由は怖いからではなく単純に立ち入り禁止の建物に入るのは危ないし、法に触れるとの事だ。


僕と赤間で中に入ると中は落書きだらけで床にはガラス片や天井部だったであろうタイルが沢山ちらばっていた。


僕は左側から2階に赤間は右側から2階に上り2階の真ん中で落ち合うことにした。


僕は闇へと続く階段を登っていた。


階段を登るとすぐに2階に着いた。廊下を歩いていると向こうからライトの光が顔を照らした。


「赤間だ」と僕は赤間のもとに走り出した。


真ん中ではなかったが、会うことが出来た。赤間はポカーンと口を開け「なんかお化け居たん?」と僕に聞く。赤間、僕は怖いのが実はめっちゃ苦手だ。


そうして左側の階段を上がり3階を探索した。


3階の天井部はほぼなく、鉄が飛び出ていた。そこから見えた星は、キラリと僕らの頭上で降り注いでいた。流れ星は、星々の輝く空は美しい眺めだった。


綺羅星、星屑、上の空。


僕はここが心スポなどということを忘れて夢のような現を堪能していた。「333号室」赤間が呟くように言った。その瞬間ゾワッと全身に鳥肌が出来た。僕は思い出してしまった。綺麗な星空を見に来たのではなく、幽霊を見に来たということを。


僕は冷や汗を額に滲ませながら赤間を見ていた。赤間は333号室に入っていった。一瞬見えなくなり、すぐに赤間の元へ足を踏み出す。部屋に居ない。と思ったが赤間は僕のすぐ前に蹲っていた。


僕は恐れながらも赤間が心配で近寄った。すると赤間はカタカタと喉を鳴らし笑った。僕は焦っていた。もみあげを汗が過ぎ去って顎を伝った。またカタカタと喉を鳴らした。


天井部はほぼない。汗がじんわりと全身を覆っている。僕は考えた結果、関田に電話をした。手汗がやばい。「もしもし」すぐに関田は出た。


「なんか赤間が蹲ってカタカタ喉を鳴らしてんだよ」待てよ、ものすごく熱い。僕は直ぐに「しかもめっちゃ熱いし」と付け足す。僕は焦っていた。ハンカチで額の汗を拭い、どうしようと関田に再度聞く。


関田は1〜2分考えたあと「なるほど」と呟き僕に言う。「そりゃマイクロ波みたいなもんだ」


関田曰く、建物自体が電子レンジのようになる。電話をかけたことで少数だが、周波数が出る。その周波数が壁を跳ね返り、2倍3倍と上がってマイクロ波に近づく。電話が建物という名の電子レンジの電源となり熱くなるとの事。


「いますぐ戻ってこい」とだけ言い関田は電話を切った。


僕はとりあえず、1枚服を脱ぐ。すると湯気が出てきた。僕は冷たい空気に触れて少し落ち着いた。僕は赤間をおんぶし、2階に行く。赤間からも蒸気が出た。僕は怖く、悲しいような熱く、寒いような感覚に襲われていた。


すると赤間は飛び起きた。僕は倒れそうになったが、火事場の馬鹿力と言うのか耐え忍んだ。


「あえ、幽霊は~? えってか暑くね、えなんでえっなんで?」話も普通にする赤間を見て、僕は赤間を下ろし、僕は普通の赤間になったんだなと思い、すぐに関田の元に行くことにした。途中赤間に質問攻めにあったが全て関田が知っていると言った。


すまん関田。


そう心で思いながら庭に出ると、関田の姿が見えた。僕と赤間は今の体験を知りたい気持ちと怖かった気持ちでいっぱいだった。


僕たちは気づくと関田の元へ駆け出していた。

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