第9話 マンションの怪異 後

私は柳田と赤間がマンションに入っていったのを見た後、することがなかったので地面に懐中電灯の光を向けてどんなものがあるか見ていた。


花崗岩や安山岩、閃緑岩、御影石などがそこら辺に落ちていた。また、砕石として青砕石、白砕石などの砕石が落ちていた。昔はここが駐車場だったんだなと思わせるようなものがそこにはあった。


石の他には空き缶やビニール袋、タバコの吸い殻といったゴミたちが集会をしているように至る所に捨ててあった。


割れ窓理論。どんな軽犯罪でも徹底的に取り締まることで、凶悪犯罪を含めた犯罪を防止できると考えられた理論。そんな事をふと考え、私たちも捕まるなと考えを止めた。


下に鬱鬱としている雑草を見る。カタバミの花が咲いていた。食べると酸っぱい植物らしい。私は植物のことはそこまで詳しくないが雨宮が教えてくれた。


他にも赤土の上にイネ科の植物やタンポポに似た雑草が生えていた。


私は色々と探索していると変な模様の入った石を見つけた。赤っぽい石だ。なんだこれは?


私は少し考え自分のケータイを出した。圏外では無かったが、相当ラグかったのを覚えている。


とにかく私は縄文土器か何かじゃないかと思い調べてみた。ビンゴだ。火焰土器の縁の模様に似ていた。


だが、不振な点があった。ここの近くには、火焰土器が発掘された遺跡がなかった。


頭をよぎる感覚。昔の記事で見た。工事の時、土器などが発掘されても、バレないように埋める。という内容だ。土器が発掘されると工事は一旦中止となり莫大な費用がかかる。


そんなことがあったら会社側も地主もマイナスになる。


とある街では8m以上を掘ってはいけないと言い、マンションなどが建てられないらしい。それ以上掘ると土器が発掘されてしまうからだ。


卑弥呼がいた邪馬台国が見つからないのもこれが原因なのかもしれない。歴史を変えたくない。自分が良ければいい。歴史が変わってもどうでもいい。そう思う人もいる。歴史を変えるには莫大なお金がかかるのだ。


このマンションを作るには地盤調査をしなくてはならない。その時に発掘をした。


だが、それを報告せずに工事を進めた。


地図にマンションがあったり無かったりしていたのは工事を一次中断していたからと思った。


歴史はすぐに変わると思う。それを隠蔽する工事の人も社会もやはり汚いと思う。


そんな事を考えていると「ヴーヴーヴーヴー」とケータイが鳴った。


ケータイに耳を当てる「もしもし」そう私が尋ねると焦った声で「なんか赤間が蹲ってカタカタ喉を鳴らしてるんだよ。しかもめっちゃ熱いし」そう柳田は言ってきた。


まずい、このままだとまずいそう思った私はすぐに考える。


まずは柳田を落ち着かせなくてはならない。自分で熱いと言っていた。それをどうにか直せばいいんだ。


そう考えていると耳に当てていたケータイがまた、「どうしよう」と言った。


私は考えた。輻射熱?熱反射?今の気温は…違うなんで熱い?不意に空を見る。キラリと流れた星を目にして思い出す。


「今日の夜はひんやりとした天気になりそうです。また、今日から明日にかけてみずがめ座η流星群が観測ピークになるでしょう」


そうだ。テレビで今日は寒くなると言っていた。


じゃあ何が原因で熱くなるんだ。火事がなぜ起きたのだろう。火元は確か三階。「あっ」となり思い出す。


そういえばこの建物鉄筋コンクリート造りの建物だ。私がまだ中学生の頃だが、テレビで見たことを思い出す。少しの周波数でも建物内で反射を繰り返し、建物内が電子レンジのような役割をするという話だ。「なるほど」ぼそりと出てきた声に促されるように私は話を続けた。


「そりゃマイクロ波みたいなもんだ」と言い、なぜ熱くなるのかを簡潔に説明した。そうして「今すぐ戻ってこい」と電話を切った。


とりあえず、私は自転車に跨り近くのコンビニに駆け出した。コンビニでアイスとココアを買いまた戻る。


5分もしないうちに戻ってきた。私と目が合うと2人はゾンビ映画宛らのステップで走り寄ってきた。


赤間に質問攻めに遭いそうになった私はココアとアイスを渡した。


ココアはもう冷めてしまったが、赤間たちの体験した話と私の火焰土器を発見した話は暖かく盛り上がった。やはり夜の団欒(怪談)は楽しかった。


赤間はマンションで見つけた火焰土器と帰りに撮った、私と赤間と柳田とひとつの家族が写った写真のコレクションが増えたと喜んでいた。


家に帰り、ちょうど1週間前に買った、電子レンジの仕組みについての本を読むことにした。確か英語で、Microwave ovenって言うんだっけな。


何気なく、自分の部屋の窓を見ると流れ星が横切った。

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