第6話 赤間退院誕生日会 転
一通り楽しく怖い談笑が終わった。プレゼントを赤間に渡す時だ。
喜んでくれるかなという緊張とサプライズの楽しさ混ざりあった。
バッグから箱を出す。赤間はキョトンとしていた。雨宮はニヤニヤと笑っていて。関田は顔をひとつも変えずただ目で箱を追っていた。
赤間が箱を開けたと同時に赤間は「怖え〜」と言って喜んでくれた。雨宮はキョトンとしていた。僕が「おめでとー」と言うと2人とも「おめでとう」と言った。
だが、雨宮はキョトンとしていた。僕はどうしたのかと尋ねると「これじゃない」囁くような声でそう言った。これじゃないってどういうことなのだろうか?僕が考えているとまた雨宮は言った「これから嫌な気が何ひとつとして感じないんだよ。赤間もわかってるんじゃないか?」僕達が思っていた嫌な気は人形にまとわりついて居た訳じゃなかった。
そうなると大捜索だ。僕のバッグを裏返し、雨宮は筆箱や教科書、タオルや財布など様々な物を触りだした。
筆箱か?違うな。じゃあタオルか?違う
そうブツブツと言いながら漁っていた。ふと手が止まった。どうやら財布のようだ。
僕に見ていい?と許しを得ると、Suicaを出す。「違うな」貨幣を出す。「これじゃない」レシートを漁る。「これでもないな」
ふと紙幣を見る。「この中や」そう雨宮が声を上げる。
そういうと千円札2枚を退かし二千円札を取り出した。
「これだ」と二千円札を凝視する。確かにお金というのは闇が深い。一日に何人のひとの手に渡るだろうか。
どんな旅をしたんだろうか。中には死の隣にあったお金もあるだろう。身近に呪える呪物は以外にお金なのかもしれない。
見た目で判断をしていた僕は改めようと思う。コトリバコは綺麗な見た目だと聞いたことがある。呪いの人形や呪物などは呪う相手にバレないように相手が好む物にするのだろう。
今回は二千円札だったため僕もどこで手に入れたか覚えている。もしみんなが持っている千円札や10円玉などだったらどこで手に入れたかなんて分からないだろう。
モノにはそれぞれの物語がある。どこで産まれ、どこでどんな過去があるのか、赤間はそういうのに興味があるらしく、よくモノの話をしてくれる。その話はまた暇な時。
そんなこんなで雨宮はその二千円札を机に置くと祝詞を唱え始めた。唱えてから五分くらいして関田が二千円札をガシッと取るとすぐに写真を撮った。その写真と二千円札を離し雨宮に見せた。この写真の二千円札とこの二千円札どっちが霊気が強いか
そう問う。雨宮は「普通の二千円札だけど写真からも霊気を感じるわ」と言って写真を今すぐ消すように言った。
関田はニヤリと笑うとすぐにチェキを持ってきて二千円札の写真を撮り現像し始めた。
雨宮に目をつぶってと言うと、撮り終えた写真を部屋の隅などにたくさん並べた。
どこに本物の二千円札があると思う?
関田が雨宮に言うと雨宮は一点を指さした。だがそれは2枚重ねた写真だった。
関田は「やっぱりな」と言い、「結構、霊気も増えることは出来ない。10をひとつずつに分けたら1が10個出来る」と説明した。
呪いも分ければ分けるほどって奴だ。今回はお札だったから破くに破けなかった。貨幣損傷等取締法に当たって捕まるからな。そう言って僕の二千円札とあの人形は赤間に渡った。
今日は初めて友達の家で20時台までいた。帰り暗くて怖かったし、補導時間ギリギリだったこともあり、僕は色々とヒヤヒヤしていた。
明日は宿題がてらに源氏物語を読もうと思う。関田が二千円札に源氏物語の鈴虫と言う話が書いてあると言っていたからだ。だがあの二千円札には6行くらいしか、書いていなかった。正確には茶色のシミがあって見えなかっただけだが。
まだ春だというのに鈴虫の奏でる「リーン リーン」という羽音が聞こえた気がしたが、僕は眠気に勝てずに目を瞑った。
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