第21話 ファリエール伯爵視点 魔王に従って恨みを晴らす時が来ました

私はマチアス・ファリエール、この閉鎖された田舎町ファリエールを有する伯爵だ。


ここははるか昔、エルグラン王家の発祥の地でもあった。当時は大きな鉱山があり、栄えていたそうだ。エルグラン王国はここから出発して今の巨大なエルグラン王国になったのだ。

しかし、今はその鉱石を取りつくした後に、王家の子孫である我が伯爵家が治めて既に300年が経っている。今は産業もほとんどなく細々と街を維持しているのが実態だ。


そんな我が家だが、王朝の始まりから宮内省の長官を代々している。領地が伯爵の割に収入が少なく、お飾り伯爵だとか周りには馬鹿にされながら代々暮らしてきたのだ。


王都から馬車で三時間の所にあるこの領地には週末のたびに帰って来ていた。


そして、この巨大なトンネルを抜けるとわが領地だ。


はるか昔鉱石を運び出すために作られた石造りのこれは300年以上たった今もびくともしていなかった。

このトンネルのお陰で、険しい山道の半日の行程が大幅に短縮されたのだ。


トンネルを出るとそこには開けた盆地が忽然と姿を表すのだ。


いつ見ても驚かされる風景だ。


そして、一面広がる田んぼの中に忽然と離宮が現れるのだ。

元エルグラン王家の王宮だ。


今の王都にエルグラン王家が進出する前の王宮で、その維持管理は今は我が家がやっていた。

当時王家の5男だった我が家に与えられた今では大きすぎる離宮だった。


この維持管理だけで領地の収入の大半が飛んでいくのだが。


今回アドルフ殿下の婚約者選定会の後半をここで開くことになったのだ。

古の先祖の眠られるこの地で未来の王妃を決めるとの名のもとに。


しかし、真の目的はこの地にいらっしゃるあの方の生贄にするためなのだ。




屋敷に帰ったその足で、私は元鉱山に向かった。


この鉱山では貴重な鉱石が取れたのだ。今では取り尽くししてしまったが……。


鉱山の入り口は鍵をかけて閉鎖されていた。


その鍵を開けて中に入る。


中からはおどろおどろしい気が漂ってきた。




その御方と出会ったのは今から10年前だ。


私は失意のどん底にいた。


私は当時、父が健在で、王立学園の教師をしていた。その時、輝くばかりに綺麗な生徒に恋してしまったのだ。本来生徒に恋するなど許されることではないのだが、私も伯爵家でその生徒も伯爵家だった。私は名前だけの伯爵家だったが、一応王家の流れのある名門だ。十分に釣り合いが取れると思ったのだ。


しかし、その娘アンナはルブラン公爵家のいけ好かない男と恋に落ちて私はあっさりと振られてしまったのだ。


私は最後に一応告白しようとしたのだ。


「先生。冗談がお好きですのね。申し訳ありませんが、冗談に付き合っているほど私は暇ではありませんので」

けんもほろろに振られてしまったのだ。

その女は私を完全に見下していた。



そのショックを癒すために、私は故郷に帰ったのだ。

そして、フラフラ山を歩いている時にその御方の声を聞いたのだ。


「貴様の恨みを晴らしたいか」

と。

「恨み?」

私はどこからか聞こえてきたその声に反応していた。


「女にこっぴどく振られたのだろう。何ならその女に仕返しさせてやろうか」

「仕返し?」

私は別に仕返ししたいわけではなかった。


「余の力が復活すればその方の望みを好きに叶えてやるぞ」

私はその声に惹かれてしまったのだ。


私を振った女アンナを私の自由にするのだ。今まで思い続けたこの思いの丈の全てをぶつけてやる。

ついでにあのいけ好かないテオドールが苦しむさまを見られれば言うことはなかった。


私はその時からこのお方の下僕になったのだ。


その方のおはす場所は坑道の奥の開けたところだった。


私はその広場に入るなり平伏した。


「マチアスか。準備はどうじゃ」

おどろおどろしい気の中から声が聞こえた。


「はっ、順調に推移しております。まもなく、選定者一行は我が館に到着いたします」

「で、そのフランとかいう小娘はいつ連れてくるのじゃ」

「明後日には連れて来れましょう」

私が言うと


「そうか、やっとこの時がきたのだな。余がその娘に憑依して魔王としてこの世界を再び支配するのじゃ」

そう言うとその御方は笑い声をあげられたのだ。


いつまでも続く不気味な笑い声が洞窟中に響き渡ったのだった。


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ついに魔王の登場です。

フランラノ運命はどうなる?

続きをご期待下さい!


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