第25話 第一王子視点3 せっかく婚約者を決めたのに、皆して邪魔してくれました

今まで婚約者の制定を渋っていた俺が、せっかく婚約者をフランすると決めたのだ。普通はそれでうまくいくと思ったのだ。


一番の難関はフランの説得だと思ったのだ。

小さいフランに俺の婚約者になってくれと言ってもピンとこないんじゃないのかと思ってしまった。でも、それはお菓子で釣ればなんとかなるんじゃないか……そう、それで誤魔化せば最悪何とでもなる。あのコロコロ表情を変えるフランを絶対に他には取られない!

俺がそう決めたのにだ。


周りの奴らが反対しだしたのだ。


筆頭はフランのルブラン家に対抗するラクロワ公爵家だ。ラクロワ公爵が言うには、フランが選定のお茶会で俺を勝手に連れ出して、娘が良く話せなかったと。それと将来の王妃の事だから、群臣に諮るのが良いとぬかしてくれた。


俺の嫁のことだから俺が決めていいだろう!

俺は切れそうになった。


それにプラスしてそのお茶会の時に休んでいた王宮の礼儀作法指南のフェリシーまでもが、フランはあまりにも礼儀作法がなっていないのではないかといちゃもんを付けてきたのだ。

いやいや、フランはまだ6歳だぞ。ある程度ちゃんとしていたから問題ないだろう。確かに大きな口を開けてお菓子を食べていたけれど、その仕草が本当に可愛かったのだ。6歳の娘にそれをお求めるか?


そして、教会までもが文句を付けてきたのだ。

ルブラン家は教会が破門した家でそこから嫁にもらうのはいかがなものかと。


いやいや待て! そもそも教会はルブラン領で悪どいことをしていたからルブラン当主に追い出されたのだ。全エルグラン王国から叩き出せと息巻く先代のルブラン公を王家が何とか抑えたのだ。それをどうとち狂って破門にしたなどと言えるのだ。

俺は教会をなぜその時に叩き出さなかったのか祖父を呪った。


その上、俺の剣の師、こいつは性格は最悪なのだが、ルブラン家の当主とはその奥方を巡って争って負けたという因縁があって、絶対にその娘は反対だとぬかしてきやがったのだ。


もう待ってほしかった。


フランは武の名門ルブラン家の娘で、王家の嫁にして何の不足もないのだ。俺が政治面は全て担うから問題ないだろう。それにルブラン家は政治面は全く口を出してこないのだから外戚としても問題ないはずだ。

軍事面でも他国に対して十二分に牽制になるのだ。別にルブラン公爵にしても、その妻の破壊の魔女にしても他国を侵略する意図はないし、逆に頼られたら助けてやっている方なのだから、近隣諸国には感謝されている。最近勢力を伸ばしてきた帝国にしてみたら嫌な存在なはずだ。

政治的外交的にも問題ないのだ。


俺のことだから問題ないだろうと甘えたことを考えたのが間違いだった。

ラクロワ公爵が配下の者を使って多くの重臣の賛成を取ってきたのだ。それもルブラン公爵を焚き付けて選定会を開くことに賛成させてくれたのだ。ルブラン公爵としては娘を嫁に出したくないというのもあって、乗ってくれたのだ。その案に……


結局制定会が開かれることになってしまったのだ。


各、ブレインの推薦ということで候補者はフランを入れて5名決まったのだ。

学園長の推薦ということでグレース・ラクロワ公爵令嬢、ラクロワ公爵の娘だ。

剣聖の推薦でその弟子のリアーヌ・ギャロワ侯爵令嬢でこいつは騎士を目指している12歳だ。

フェリシーの推薦でメラニー・バロー男爵令嬢、ここは最近力をつけだしたバロー商会の娘だ。

さらに、魔術論理の大家で教会の犬と言われるブノワト・オスマンの推薦でローズ・ボア、枢機卿の養女だ。


まあ、この中でフランの最大のライバルはグレースだろう。


それに選定会のメンバーというのがとても気になる。何かどう見てもラクロワ公爵の息がかかっていそうな面々なのだが。


ラクロワ公爵が言うには、ルブラン公爵の言う事も聞いて、剣術から剣聖を魔術からオスマンを入れたというのだが……どう見ても剣聖はルブラン公爵を目の敵にしているし、オスマンは魔術実技ではなくて魔術理論だし、神を信じれば魔術は上達するとかいうトンデモ理論で教会から莫大な寄付を受けている教会の犬だ。


最後にフランとグレースの対決になった時は絶対にグレースに入れると思われた。


それでなくてもフランは礼儀作法が苦手そうだ。


こいつら俺の意向をここまで無視してくれるとは良い根性をしている。覚えていろよ。俺が国王になった暁には絶対に辺境に飛ばしてやる。

俺は心に誓ったのだ。


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