第10話婚約の件で父親が反対する中、王宮に呼ばれました

ええええ!


六歳にして婚約を申し込まれたんだけど……

私は目が点になってしまった。


相手はこの国の第一王子殿下だ。


今まで興味は無かったけれど、いきなり王子様に跪かれたらさすがの私でも悪い気はしない。

私も女の子だし、こういう事をされたいと思った事はあった。

それも相手は本物の王子様で、なおかつ正装してくれているんだけど。

これで一度も婚姻を申し込まれたことがないという最悪の事態は避けられたし……


私は勢いで思わずその手を取ってしまいそうになった。


「殿下、いきなりそのような事をしてもらっては困ります。こういう事は公爵様を通して頂かないと」

私以上に取り乱したのはシモーヌだ。驚いて立ち上がって殿下に詰め寄っているんだけど……

アリスもびっくりした顔で固まっているし。


「それはそうだが、まずフランソワーズ嬢がどう思ってくれているかだろう?」

「えっ、私? そんなこと考えたことも無かったし」

「俺と婚約したらこのケーキは好きな時に食べ放題だぞ」

「本当に!」

私はその言葉に目を輝かせたのだ。


「フラン様。食べ物に惑わされてはいけません」

シモーヌに注意されてしまった。

危なかった。ケーキに釣られて危うく、その手を取るところだった。


それにアドと婚約するという事は将来的に王宮に入るという事で、王妃様がお義母様になるという事だ。そう言えばお父様に勧められてアリスの読んでくれた『王宮どろどろ物語』では、確か、王子と幼くして婚約した他国の王女が義母である王妃様に徹底的に虐められる話だった。さすがの私もそれは嫌だ。

それに王宮は人との付き合いがどろどろしているとか、怨霊や化け物がうろうろしているとお父様も言っていた。でも、怨霊や化け物なら私が退治してもいいかもって思ったんだけど……


取り合えず、アドには今日の所はお引き取り頂いた。


「フラン、良い返事を期待しているから」

目を期待に輝かせてアドが言ってくれるんだけど……


私のどこが良かったんだろう? いまだに疑問だ。

だってお茶会でははしたなくもケーキを食べてばかりいたし、後でシモーヌは私にその事を後で注意してきたけれど、元々お母さまが一杯ケーキが食べられるからって言ってくれたから参加したのに!

そんな私に殿下が好きになるわけは無いはずだってシモーヌは言うんだけど。


アリスは私が全くアドに興味も示さずにケーキばかり食べていたからかえって興味を持ったんだろうとか言うし、魔道通信で領地とつないで通信したら、お父様がそれは許さんと叫んでいた。

「六歳で婚約とかありえないだろう」

と涙目で言うんだけど。


お母様は冷静で「その件はフランの好きにしていいわ」

と言ってお父様と喧嘩していた。


好きにしていいってこんな大切な事を六歳児に任せるっておかしくない?


まあ、無理やりやらされるより余程良いけれど。


そんなこんなやっている時に、また王宮から呼び出しがかかったのだ。


「絶対に即答はしてくれるなよ」

お父様が私に泣き込んで来たので仕方なしに私は頷いた。なんかお父様が包帯を巻いていたけれど、あれは絶対にお母さまとやり合ったのだ。

絶対に敵わないから、やらなければいいのに!

子供心に私は思った。


王宮には着飾ったシモーヌを先頭に両脇に子爵令嬢のアリスとこれも伯爵令息の正装のエリクを従えて、完全に公爵令嬢の格好なんだけど。後ろのこれも子爵令息嫡男のディオンだけが騎士の格好だけど……でも、絶対に前の四人の方が騎士のディオンより強いんだけど。シモーヌも名のある魔術師だし、アリスも武術の心得あるし。


私達は応接室に通された。


さすが王宮の陛下の利用される応接室だ。立派な装飾と高価そうな机にソファ。ソファはふわふわで思わず飛び跳ねそうになった。


私の左横がシモーヌで、私、アリス、ディオンの順番だ。ディオンは今日は騎士なので、後ろに立っている。

「なんか、皆で家族みたいね」

「家族ですか?」

「シモーヌがおばあさんで、私が孫、アリスは年の離れたお姉さんでエリクがおじさん」

私が言うと「おばあさん……」「おじさん」

シモーヌとエリクが固まっているんだけど……

「なんか変なこと言った?」

私が聞くと

「いえ」

「その」

戸惑う二人間でアリスが噴出しているんだけど。

「アリス!」

「申し訳ありません」

シモーヌに注意されてアリスが慌てて表情を戻した。

後で聞いたらシモーヌはまだおばあさんの年では無いってむっとしたそうで、エリクもお兄さんと言って欲しかったそうだ。でも、子供心にもそれは無いだろうと思ってしまったんだけど。

「フラン様も私くらいの年になったらお分かりになります」

とシモーヌに言われてしまったんだけど、そんなの後何十年もかかるではないか……


私達がほっとした時、陛下たちがいらっしゃったのだ。

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